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    Hirofumi TAKATA

    Author:Hirofumi TAKATA
    スポーツライター。
    現在『週刊ベースボール』『Baseball Clinic』『熱中!野球部』『野球太郎』『ホームラン』等の各雑誌、スポーツ紙『デイリースポーツ』などにおいて、独立リーグ、高校野球を中心に取材、執筆活動を続けている。
    4月2日生まれ。A型。

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2013/06/25(Tue)

「負けて悔いなし」ではなく

四国アイランドリーグplus 2013コカ・コーラ杯 前期公式戦
2013.6.22. 香川オリーブガイナーズ 1x‐0 高知ファイティングドッグス 12回戦(前期最終対戦) <レクザムスタジアム> 観衆 2,181人

2013.6.22. 香川OG 1x-0 高知FD(レクザム)
サヨナラ本塁打を放った島袋を迎え入れる香川OGの選手たちの向こうで、井川が汗をぬぐう

高知FD 000 000 000|0
香川OG 000 000 001x|1

勝 又吉 7勝1敗
敗 井川 3勝6敗

バッテリー
高知FD 井川 - 屋宜
香川OG 又吉 - 大川

本塁打
高知FD
香川OG 島袋3号ソロ(9回サヨナラ、井川)


 香川オリーブガイナーズ、徳島インディゴソックス、愛媛マンダリンパイレーツの前期優勝を懸けたサバイバルはまだ続く。2位・徳島ISに1.5差をつけて迎えた高知ファイティングドッグスとの前期最終戦が香川OGのホーム・レクザムスタジアムで行われた。
 香川OGの先発は、きのう雨天中止となった愛媛MP戦で先発予定だった又吉克樹(22歳、IPU環太平洋大)がスライド登板となる。高知FDの先発は井川博文(25歳、愛媛MP)と、今年のアイランドリーグを代表する2人のサイドスローの投げ合いとなった。
 試合は非常に高いレベルでの投手戦となる。1巡目の打者9人を投げ終え、早くも7個の三振を奪った又吉に対し、井川も被安打1のまま好投を続ける。5回終了時点での試合経過時間は59分と、速いテンポで試合は進んだ。
 7回を終えても両軍無得点の状態が続く。8回表二死、高知FDの六番・曽我翔太朗(23歳、ノースウエストフロリダ州立大)の打った二遊間へのゴロを遊撃手がファンブルする。これがイレギュラーヒットと記録され、又吉の完全試合達成はあとアウト4つのところで夢と消えた。続く七番・西畑英俊(24歳、IPU環太平洋大)が左中間へ放った打球を、センター・北村祐(26歳、三重スリーアローズ)がダイビングキャッチして抑える。高知FDは初めてつかんだチャンスを生かせない。
 8回裏、香川OGは一死から九番・大川修也(20歳、地球環境高)が打った、チーム2本目となる中前打などで一死満塁のチャンスをつかむ。だが、井川も踏ん張る。三番・国本和俊(29歳、三重中京大)を遊飛に、続く代打・中川竜也(24歳、徳島IS)も外角へのスライダーで三振に切って獲り、得点を許さない。
 9回表、又吉は高知FD最後の攻撃も三者凡退に封じ込み、無失点のままマウンドを降りる。9回裏、香川OG先頭の五番・島袋翔伍(23歳、ビッグ開発ベースボールクラブ)は2球目を捉えると、打球は一直線に右翼スタンドへと消えて行く劇的な4号サヨナラ本塁打となり、香川OGが高知FDを下した。
 又吉は今季2度目の完封勝利、初の無四球完封でハーラートップタイとなる7勝目を挙げた。愛媛・大洲で行われていた愛媛MP‐徳島IS戦で徳島ISが勝利したため、香川OGに前期優勝へのマジックナンバー「1」が点灯。愛媛MPは優勝争いから脱落することが決定し、いよいよ前期優勝の可能性は首位・香川OGと2位・徳島ISのみに絞られた。


『「負けて悔いなし」ではなく』

 試合後、三塁側ダグアウト裏の通路に出てきた井川博文(25歳、愛媛MP)をつかまえた。そのすぐ横を吉田豊彦コーチ(高知FD)が通る。
「よう話、聞いたって下さい!」
 吉田コーチも認める好投、そして今季ベストと言ってもいい両投手の素晴らしい投手戦だった。あわや完全試合達成を予感させた又吉克樹(22歳、IPU環太平洋大)に、井川は一歩も引けを取らなかった。
 高知FDが優勝争いから早々に脱落してからというもの、自身の目標を「奪三振王」に完全に置き換えている。今秋のドラフト指名を現実のものにするために、それも1つの手段として間違っていない。
 だが、このゲームに関しては少し意識が違っていた。
「毎回、三振獲ろうかと思ったんですけど。勝ちたかったんで抑えて行きました。『速さ』よりも『キレ』」
 前回、登板した対香川OG前期9回戦(6月14日、レクザム)で自己新となる最速149㌔を記録したような球速へのこだわりを捨て、よりキレのある投球で香川OGを倒す。3回までに早くも7奪三振と絶好調ぶりを見せつける又吉のことは当然意識したが、今日に関してはまず〝勝つこと〟を最大の目標に掲げていた。
 6回までに許した出塁は六番・大原淳也(28歳、横浜DeNAベイスターズ)の右翼線二塁打、四番・桜井広大(29歳、阪神タイガース)を歩かせた四球、この2つだけである。うまくコースを突きながら、要所で速いスライダーとストレートを駆使して香川OG打線を抑え込む。7回裏、四番・桜井と五番・島袋翔伍(23歳、ビッグ開発ベースボールクラブ)を連続四球で歩かせたが、六番・大原、七番・生田目翔悟(22歳、JFE東日本)と右打者2人をいずれも内角へのスライダーで見逃し三振に切って獲っている。
 この試合で最大のピンチは8回裏だった。一死から九番・大川修也(20歳、地球環境高)に変化球をセンター前に運ばれたあと、2つの四死球で満塁にしてしまった。5四死球は大きな反省材料である。だが、このピンチでも粘りの投球を見せる。
 三番・国本和俊(29歳、三重中京大)が打ったレフトとショートの間に上がる難しいフライを、ショート・村上祐基(25歳、立正大)がこちらに背中を向けながらのスライディングキャッチで捕球し、落とさない。
 香川OG・西田真二監督は、ここで四番・桜井に代え右の切り札、中川竜也(21歳)を代打に送った。前回の香川OG戦6回裏、二死二、三塁の場面で中川に初球をライト前へ運ばれた。2点を失う逆転打の記憶は、はっきりと残っている。
「この前、スライダー打たれてたんで。絶対三振獲ろうと思って。ま、結局自分が作ったピンチなんですけどね」
 追い込まれながらも4球連続ファールで粘る中川に対し7球目、外角へ逃げるスライダーで空振り三振に獲った。この場面が今日のベストピッチである。
 7回、8回と2度のピンチを逃した香川OGの拙攻により、9回表の流れは高知FDに傾いたかに見えた。だが、完全試合を逃したとはいえ、抜群の安定感を見せる又吉は、先頭打者から今日11個目の三振を奪う。高知FD最終回の攻撃も三者凡退に抑え、マウンドを降りた。
 9回裏、最後のマウンドへと向かう井川の胸に、ほんの少しだけ隙ができていた。
「引き分けで終われるかなって。安易な考えがあったんで。ちょっと隙ができたっスね」
 先頭の五番・島袋とは今日、4度目の対決になる。内角へのボールに差し込まれている感じがある。ホームランがある打者だが、あまり打たれているといった悪いイメージはない。初球、内角へのストレートでストライクを取った。次の2球目、甘くなったストレートを弾き返された。打球はライトスタンドへと真っ直ぐに伸びて行った。
 島袋が二塁ベースを回っている。両ヒザに手を置いて少しだけうなだれたあと、黄色いグラブを右手に持ち替え、左手で額の汗をぬぐった。バックネットに背中を向けたまま、ホームインした瞬間はまったく見ていない。そのままマウンドを降りた。
「もうちょい三振獲っときゃ良かったですね! それならね。反省点はフォアボールです。ホームランは、打ったバッターが上なんで。開き直れるっス」
 負けて悔いなし、ではない。いつものように明るい調子でこちらからのインタビューに答えながらも、小さく一言だけ「悔しいっス」とこぼしている。
「前期、もう1回投げたいですね。三振稼ぎたいんで。ちょうど1週間後ぐらいに(代替試合での登板が)入ってきそうなんで」
「ナイスピー」と言ってインタビューを終えた。香川OGの取材に一塁側へ続く通路に向かおうとすると、こちらの背中に声を掛けて来た。
「島ブー(島袋)に『ナイスバッティング』って言っといて下さい!『ナイスバッティング!(ホームラン賞として贈呈される)うどんくれ!』って」
 ひょうひょうとした、いつもの井川の顔に戻っていた。




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  • No Title

    「投手戦はつまらない」とか言う人もいますが、投手戦こそ野球の醍醐味ですよね。
    完全試合を逃したのは少し残念でしたが、最後に劇的なサヨナラホームランを見れたので行った甲斐がありました。

    観戦した試合でガイナーズのサヨナラ勝ちは9度目でしたが、そのうちサヨナラホームランは3度目でした。

  • Re: No Title

    >テツさん
    両投手の好投は見事でした。まさかサヨナラで勝負が決するとは思ってもみませんでしたが、レクザムスタジアムに集まったたくさんのお客さんにとっては、非常にインパクトの残るゲームになったのではないでしょうか。

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