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    Hirofumi TAKATA

    Author:Hirofumi TAKATA
    スポーツライター。
    現在『週刊ベースボール』『Baseball Clinic』『熱中!野球部』『野球太郎』『ホームラン』等の各雑誌、スポーツ紙『デイリースポーツ』などにおいて、独立リーグ、高校野球を中心に取材、執筆活動を続けている。
    4月2日生まれ。A型。

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2012/09/30(Sun)

「なんか、やっぱ緊張してたんで」

四国アイランドリーグplus 2012 リーグチャンピオンシップ 第1戦
2012.9.29. 愛媛マンダリンパイレーツ 0‐10 香川オリーブガイナーズ <マドンナスタジアム> 観衆 1,014人

香川OG 000 103 501|10
愛媛MP 000 000 000|0

勝 渡辺 1勝
敗 古館 1敗

バッテリー
香川OG 渡辺、プルータ、西村、後藤、大場 - 大川、星野
愛媛MP 古館、入野、井上、白川 - 宏誓

本塁打
香川OG
愛媛MP 


 2012年シーズンを制するのは前期王者・香川オリーブガイナーズか。それとも後期王者・愛媛マンダリンパイレーツか。総合優勝を決める「2012リーグチャンピオンシップ」が開催され、愛媛MPのホームである松山・マドンナスタジアムで第1戦が行われた。ゲーム開始直後こそ小雨降るなかでの試合となったが、徐々に雨も止んでいる。
 序盤3回を共に無得点で終えた4回表、香川OG打線が愛媛MP先発の左腕・古舘数豊(24歳、福岡大)を捉える。三番・国本和俊(29歳、三重中京大)、四番・桜井広大(29歳、元阪神)が連続安打で出塁すると、五番・ペレス(ウィルバー・ペレス、29歳、ドミニカ出身、ノースアメリカンリーグ)の左中間を破る適時二塁打により二塁から国本が生還、先制のホームを踏んだ。
 だが4回裏、愛媛MPも香川OG先発・渡辺靖彬(20歳、京都ジャスティスベースボールクラブ)から三番・藤長賢治(24歳、大体大)、四番・ブレット(ブレット・フラワー、29歳、米独立・アメリカンアソシエーションリーグ)の連続安打で無死一、二塁のチャンスをつかむ。さらに六番・高田泰輔(23歳、新田高)の三塁後方に落ちるラッキーなテキサス安打で一死満塁とチャンスを拡げる。しかし、七番・近藤幸志郎(26歳、松山大中退)が二塁併殺打に倒れ、大きなチャンスを逃した。
 後半スタートとなった6回表、古館は先頭の国本にストレートの四球を与え出塁を許す。四番・桜井の打球は鋭く左前を襲う。濡れた人工芝に左翼手が足下を取られている間に国本が生還、香川OGが2点目を奪った。愛媛MPベンチは古館に代え、二番手に入野貴大(23歳、プロ育成野球専門学院)を送る。だが、一死三塁として六番・大西正剛(25歳、長崎セインツ)に三遊間を破られ3点目を許す。香川OGは二死三塁から遊撃手の失策によりこの回3点目を挙げ、4‐0と愛媛MPを突き離した。
 香川OGは7回表にも四番・ペレスの2点適時打となる左前二塁打などで3点を追加、入野を攻略する。代わった三番手・井上貴信(28歳、佐賀魂)から六番・大西が右翼手の頭上を越える適時三塁打、七番・北村祐(26歳、三重スリーアローズ)の連続適時打となる中前打でこの回5点を加え、9‐0とさらにリードを拡げた。
 9回表にも七番・北村の中越え適時二塁打でダメ押しとなる10点目を挙げ、完全に勝負を決める。投げては5回を無失点で投げ終えた渡辺に代わり、6回からプルータ(アンソニー・プルータ、29歳、キャナム・リーグ)、7回を左腕・西村拓也(23歳、福岡レッドワーブラーズ)、8回から左腕・後藤真人(24歳、アークバリアドリームクラブ)の継投で愛媛MP打線にチャンスを与えなかった。最後は9回一死一塁の場面からマウンドに登った五番手・大場浩史(26歳、広島経済大)が二者連続三振に獲り、試合を締めた。
 大量12安打を放った香川OGが10‐0の完封勝ちにより快勝、敵地での初戦を見事白星で飾った。第2戦は明日30日、松山・坊っちゃんスタジアムで18時よりプレーボールとなる。


『「なんか、やっぱ緊張してたんで」』

 リーグ戦で何度もぶつかっている対戦相手、そしてリーグ戦で使っている球場でのゲームには違いない。だが、いつもとは明らかに何かが違う。年間総合優勝を懸けた「リーグチャンピオンシップ」の戦いは、グラウンドに立った者を独特の「緊張感」に包み込む。
 3勝で優勝が決まる短期決戦である。流れをつかむために最も大事な第1戦に、前期王者・香川OGが先発投手として送り込んだのは渡辺靖彬(20歳、京都ジャスティスベースボールクラブ)だった。西田真二監督がかねてから明言している「短期決戦では調子のいい選手から使う」というポリシーにのっとった起用である。7月21日の対高知FD2回戦(四万十)以降、先発した7試合で連続して「負け」が付いていない。愛媛MP戦で完封してのスコアレスドロー(8月21日、後期10回戦(宇和島))も演じている。
 立ち上がりを無失点で切り抜けながら、しかし徐々にいつもとは違う雰囲気に飲み込まれ始めていた。
「立ち上がりは良かったんですけど、3回か4回ぐらいから、なんか足に力が入らなくて。しかも、いつもより全然疲れの度合いが違うんです」
 負けられないプレッシャーと、そのために「先頭打者だけは絶対に出塁させるまい」と思う力みが、まだ50球にも達していない投球数とは思えないほどの疲労感を身体に覚えさせている。アイランドリーグ1年目の今季、公式戦で投げた21試合、85イニングのどれとも違う緊張感だ。思っている以上に身体に力が入らない。乗り越えるにはもう、気合いしかなかった。
「なんか、やっぱ緊張してたんで。声出して投げてました。マウンド上がる前に「よしっ!」。ヒット打たれたあとに「あーーーっ!」みたいなの言ってからボールもらって、気合い入れ直してました」
 西田監督から命じられた「5イニング」を無失点で終えるために、乗り越えなければならない最大のピンチは4回裏に訪れた。先頭の三番・藤長賢治(24歳、大体大)が変化球を右前に弾き返すと、続く四番・ブレット(ブレット・フラワー、29歳、アメリカンアソシエーションリーグ)が高めのボール球を中前へライナーで運ぶ。DHの五番・橋本将(36歳、元横浜)を左飛に打ち取ったところで、三塁側ダグアウトから伊藤秀範コーチがマウンドへ歩み寄り、間を空けた。
 だが、六番・高田泰輔(23歳、新田高)に対し1ボール2ストライクと追い込みながら、フラフラと上がった打球が三塁手と左翼手との間に落ちる。4回表に味方打線が1点を先制してくれている。点を獲ってくれたあとの絶対に獲られてはいけない場面で、すべてのベースが走者で埋まる。一死満塁のピンチを迎えた。
 七番・近藤幸志郎(26歳、松山大中退)が左打席に足を踏み入れる。捕手・大川修也(19歳、地球環境高)が出した初球のサインはチェンジアップだった。集中力が緊張感を上回った。
「きっちりミット構えてるところにコントロールできて。で、案の定それを打ちに来て、やっぱ内野ゴロになってる」
 納得のボールに手を出させ、打球が二塁手の正面に転がる。一打逆転のピンチを1球で内野ゴロ併殺打に打ち取った。ここがこのゲームの勝敗の分かれ目であったと言って過言ではないだろう。獲るべきところで点を奪えなかった愛媛MPの負の流れは、逆に香川OGへの追い風となり6回、7回の大量得点へとつながって行った。
 初戦先発の大役を果たした渡辺を筆頭に、西田監督が投手陣を手放しで褒めたたえる。
「渡辺が粘り強く投げて、レギュラーシーズン後半の勢いのまましっかりゲームを作ってくれた。5回で代える形を採っていましたんでね、ウチのパターンですから。(投手陣)全員ゼロで抑えたわけですから、本当に100点満点じゃないですか」
 ホーム・レクザムスタジアムに戻り、チャンピオンシップ2度目の登板もおそらくあるだろう。これから1週間はそこに備えることになる。
「相手に気持ちで負けないように。どんどん投げ込んでいけるようなコンディション作りを、また今週やりたいと思います。でも自分、結構ホームで緊張するんですよ。知ってる顔ばっかなんで…」
 次はもう緊張しないのでは? と聞いた質問に、そんな風に答えた。




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