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    Hirofumi TAKATA

    Author:Hirofumi TAKATA
    スポーツライター。
    現在『週刊ベースボール』『Baseball Clinic』『熱中!野球部』『野球太郎』『ホームラン』等の各雑誌、スポーツ紙『デイリースポーツ』などにおいて、独立リーグ、高校野球を中心に取材、執筆活動を続けている。
    4月2日生まれ。A型。

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2009/05/07(Thu)

悲壮な覚悟の下で

四国・九州アイランドリーグ2009 前期公式戦
2009.5.5. 徳島インディゴソックス 8‐2 高知ファイティングドッグス <オロナミンC球場> 観衆936人

高知FD 001 000 001 | 2
徳島IS 000 014 30×| 8

勝 光安祐輝 1勝
敗 山中智貴 1勝2敗1S

バッテリー
高知FD 山中、武田 ‐ 飯田、宮元
徳島IS 光安 ‐ 荒張

 小雨が降り続くオロナミンC球場で行われた徳島インディゴソックスと高知ファイティングドッグスとの3連戦第2ラウンドは、共に初先発となった高知FD・山中智貴、徳島IS・光安祐輝の投げ合いになった。1対1の同点で迎えた6回裏、山中を捉えた徳島IS打線が3連打で4点を奪う。さらに7回にも3点を挙げ、高知FDを大きく突き放した。光安は9回を投げ切り、リーグ初勝利を完投で手にした。徳島ISが高知FDとの3連戦を1勝1敗とし、今季戦成績でも2勝2敗のタイに戻している。


『悲壮な覚悟の下で』

 アグリあなんスタジアムで行われた昨日(4日)の高知FD戦に、光安祐輝(徳島IS・23歳)はベンチを外れた。その1日前、3日のサーパススタジアム・香川オリーブガイナーズ戦でロングリリーフし、5回を投げている。4日はいわゆる『あがり』であり、記者室で相手投手のデータを記録する仲間たちの後ろに腰掛け、真剣な眼差しでグラウンドを見つめていた。
 実はただのあがりではなかった。明日、中1日での登板を、しかも初の先発マウンドを言い渡されていた。たった1日のあがりは、少しでも相手攻撃陣の特徴を探るための貴重な時間だったのである。
「チャンスになったら初球からガンガン振ってくるな、とか。バッターの苦手なコースを探したり。自分に自信が持てる何かを見つけられたら、と思って。何もないよりはマシなんで」
 6連戦のスケジュールのなか、どのチームも投手陣は厳しい連投を余儀なくされている。だが、疲れが残っているなどとは言っていられない。投げさせてもらえることは逆に大きなチャンスでもある。
 シーズン開幕前の自主トレ期間中から、大きな期待を掛けられていながら肩痛で出遅れ、オープン戦でも結果を残せないままシーズンに突入してしまった。チームはいつまでも待っていてはくれない。ケガのため練習生としてチームに帯同していた先輩ピッチャーの梅原伸亮が、昨日限りでチームを去っている。そんな姿も目の当たりにしている。
「何回もチャンスはある…とは思っていなかった。これを逃したらチャンスはない」
 危機感に溢れた悲壮な覚悟の下で、初先発のプレイボールがコールされた。
 低目に決まるカーブに高知FD打線がタイミングを合わせられない。3回表に長打を2本連続で浴び失点を許したが、5回以降、8回まで1本のヒットも許さなかった。味方打線が7点の大量リードを奪ってくれている。最終回、肩と足に溜まる疲労がピークとなり、連続四球で無死一、二塁のピンチを迎えた。気持ちを切り替えようと、マウンド上で屈伸運動を行っている。1点を失ったが、9回を最後まで投げ切った。駆け寄ってきた仲間たちに囲まれ、ハイタッチを交わす光安の瞳には涙が浮かんでいた。
「加藤さん(博人コーチ)からは『9回投げ抜け!』って言われてました。チームの勝ち星が少ないなかで、ずっと期待してもらってましたし、声も掛けてもらってました。チャンスをもらえたんで、投げ抜くって言っても基本はひとりひとり丁寧にと思って」
 首脳陣が先発を決断したのは、3日の香川OG戦を見たあとのことである。先発投手が制球に苦しみ、無死満塁とされたピンチの場面でマウンドに登った。いきなり死球を与え押し出したあと、さらに2点タイムリーとなるライト前ヒットを浴びている。
 ファーストを守っていた永井豪(25歳)がマウンドに歩み寄り、声を掛けた。
「あいつ、顔から血の気が引いてました。『なんや、おまえ抑えられると思ってたんか!』って。『この状況でそんなんムリやって! 思い切ってやったらええやん!』って、そう言ったんですよ」
 そこから立ち直り、8回まで香川OG打線をヒット1本に抑え込む。加藤コーチの目にもはっきりとした変化が感じられていた。
「秋に見たときもバッターに向かって行く気持ちと、簡単にストライクを獲れるのがいいところだったんだけど、肩痛から出遅れてたから。投手陣の少ないなかで登板させざるを得なかったんだけど、香川戦で長いイニング投げて、あれで気付いたんだと思う。試合で投げて感覚をつかむことが大事なんでね」
 実戦で結果を残すことが何よりも大きな自信につながる。故障から復帰し、目標を追い掛けながら階段を一段一段登っている。降り続いた雨のなかで最後まで必死に投げ続け、やっと1勝をつかみ獲った。ここからがまた新たなスタートになる。
「これからも同じスタイルで行きます。練習でやってきたことしかマウンドではできないと思うんで」
 濡れたユニフォームを白いスウェットに着替えた光安の眼に、もう涙はなかった。




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