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    Hirofumi TAKATA

    Author:Hirofumi TAKATA
    スポーツライター。
    現在『週刊ベースボール』『Baseball Clinic』『熱中!野球部』『野球太郎』『ホームラン』等の各雑誌、スポーツ紙『デイリースポーツ』などにおいて、独立リーグ、高校野球を中心に取材、執筆活動を続けている。
    4月2日生まれ。A型。

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2013/04/27(Sat)

『「ありがとう」』

四国アイランドリーグplus 2013コカ・コーラ杯 前期公式戦
2013.4.24. 高知ファイティングドッグス 1‐3 香川オリーブガイナーズ 3回戦 <高知球場> 観衆 399人

IMG_3946 (1024x683)
3年越しのウイニングボールを手にする篠原慎平(香川OG)

香川OG 010 000 002|3
高知FD 000 000 001|1

勝 篠原 1勝0敗
S 酒井 0勝0敗2S
敗 井川 0勝2敗

バッテリー
香川OG 篠原、永川、田村、後藤、酒井 - 有山
高知FD 井川、吉川 - 安田、屋宜

本塁打
香川OG 
高知FD


 高知ファイティングドッグスのホームゲーム5試合目はビッグマッチである。高知県の民放局、テレビ高知がゴールデンタイムで試合を生中継する。大一番での7連敗を阻止すべく、右のサイドスロー・井川博文(25歳、愛媛MP)を先発に送り込んだ。香川オリーブガイナーズは肩の手術以来、2年11カ月ぶりの先発マウンドとなる篠原慎平(22歳、愛媛MP)を送った。
 香川OGは2回表一死、二番・大原淳也(28歳、横浜DeNAベイスターズ)が左翼線に二塁打を放つ。一死一、三塁として八番・生田目翔悟(22歳、JFE東日本)も左翼手の頭上を越える適時二塁打を放ち、1点を先制した。
 だが、2回の失点以降、井川は香川OG打線からヒットを許さない。3回表に3者連続三振を奪うと、午後7時を回ったころからさらに球に勢いが乗った。最速147㌔を記録しながら打線の援護を待つ。
 香川OG先発・篠原は走者を背負いながらも要所を締める。4回裏、先頭の六番・梶田宙(30歳、愛知大)に左翼線へ二塁打を浴び無死二塁のピンチを迎えるが、七番・今中尭大(23歳、高知中央高)の投前への送りバントをうまく処理し、二塁走者を三塁へ進ませない。二死二塁から九番・安田開(19歳、京都国際高)をスライダーで空振り三振に仕留め、ピンチを脱出した。篠原は5回裏にも3者連続三振を奪い4者連続三振、高知FD打線を5回無失点に封じ込めた。
 8回を1失点と好投を続けた井川だったが9回表、先頭の六番・大原の打球に目測を誤った左翼手が落球(記録は二塁打)、無死二塁のピンチに陥る。七番・北村祐(26歳、三重スリーアローズ)も左前安打で続き、無死一、三塁とした香川OGは八番・生田目が今日3本目となる適時安打を中前に弾き返し、ようやく追加点を奪う。高知FDベンチは一死二、三塁となったところで井川に代え、二番手に左腕・吉川岳(27歳、桃山学院大)を送るが、一番・小栗健太(24歳、広島修道大)の三ゴロの間に三塁走者が還り、3点目を失った。
 6回以降、リリーフ陣が無失点リレーを続けた香川OGは9回裏のマウンドにクローザー・酒井大介(26歳、長崎セインツ)を送る。だが、一死から六番・梶田に中前安打を許すと、九番代打・曽我翔太朗(23歳、ノースウエストフロリダ州立大)の三塁内野安打などで二死満塁のピンチを背負う。暴投で1点を失ったが、最後の打者を空振り三振に獲りリードを守り切った。
 香川OGが3‐1で高知FDを破り2位に浮上、貯金を「2」とした。篠原が約3年ぶりの勝ち星を挙げ、酒井が2つ目のセーブポイントを記録している。高知FDは井川が2敗目、開幕以来7連敗といまだ泥沼を抜け出せない。


『「ありがとう」』

 篠原慎平(22歳、愛媛MP)が最後に先発マウンドに登ったのは2010年5月22日、宿毛での高知ファイティングドッグス戦までさかのぼる。当時19歳、愛媛マンダリンパイレーツの若き速球派右腕として期待されながら右肩痛を発症し、同年12月に手術を受けた。以降、実戦マウンドに登ることはなく、昨年は愛媛MPの練習生として復活への道を模索し続けた。だが、復帰への願いはかなわず、現役続行へ最後の望みを掛けた2012年12月のトライアウトで香川オリーブガイナーズへの入団が決まる。練習生からのスタートだったが、合同自主トレ開始とともに晴れて契約選手となった。
 民放局がこの高知FD対香川OG戦を生中継することもさることながら、長くリーグを見続けているファンにとっては「あの慎平が先発マウンドに登る!」というトピックも、決して小さな話題ではなかった。
 だが、誰よりも緊張しながらそのときを待っていたのは当の本人である。
「離脱したのが(10年)5月なんで。ちょうど3年ですね。3年ぶりの先発マウンドですよね。いや、めちゃくちゃ緊張です。めっちゃめちゃ緊張してて。リーグ、もう6年目じゃないですか。1年目の先発くらい緊張しました」
 いざマウンドに登れば、まったく地に足が着いていない。胸の鼓動が大きく波打つのが聞こえる。イニングごとの先頭打者をなんとか抑えようと、普段よりさらに20%ほど集中力を上げて打者に対峙した。
「スライダーが生命線なんですけども、ケガしてからもう真っ直ぐ、真っ直ぐっていうピッチングができないんで。球速自体も10㌔近く落ちてるし、そこも求めてないし。変化球で組み立てていかないと、この先勝てないと思うなかで変化球の精度が…。3回くらいまで全然ストライク入らなくて」
 走者を背負いながらも、なんとか3イニングを無失点で乗り切った。味方が1点を先制してくれている。だが4回裏、六番・梶田宙(30歳、愛知大)にフルカウントからスライダーを左翼線へ運ばれた。試合の流れが高知FDに大きく傾く。
 しかし、長打を食らったことで逆に気持ちがほぐれた。ここから持ち味が光り出す。無死二塁、七番・今中尭大(23歳、高知中央高)が初球をバントで転がした。マウンドと三塁線の間に転がった打球に素早くマウンドを駆け下り、身体を反転させながら三塁へボールを送る。
「欲は出さないように、出さないようにって思いながら放ってたんですけど、やっぱり点獲られたくないし。ランナー二塁に行ったときもバントって分かってて。『絶対刺したろ』と思ってイメージもできてて。その通りにいけて」
 そのあとの4者連続三振よりも、今日の篠原のハイライトはここだろう。見事なフィールディングで一瞬にして無死二塁のピンチを一死一塁に変えた。
 この約3年間、試合中は主に、ネット裏からチャートやスピードガンを記録する裏方の仕事ばかりしてきた。あとから来た若い投手たちがどんどん追い抜いて行く。「しょうがない」と自分に言い聞かせながら、黙って仕事をこなし続けるしかなかった。
 しかし、そこから逃げなかったことで気付いたこともある。
「この2、3年くらいずっと、ボールは投げれんかったけど、そういうフィールディングとかずーっと後ろで見てて。自分の気持ちの持ち様にも余裕というか。今日、いっぱいいっぱいでしたけど、客観的に見ることもできるようになって。プラスになってるかなぁっていうのはあります」
 強いマウンドへの渇望と、投げられない焦燥感のなかで「オレならこういう場面でこうする」というイメージを描き続けていた。やがて実戦のマウンドに再び帰って来たとき、それが生きた。
 3年ぶりに手にした1勝は、とてもとても大きな1勝である。
「長かったですね。ケガをしたってことが一番辛くて。そこまで来てて、NPBが見えてて。ケガしてしまった自分にも苦しかったし、リハビリもなかなかうまくいかんくて、長いこと地道なことばっかりして。いろんな葛藤がありましたね。むちゃくちゃ。むちゃくちゃ大きいです。こっからです。ホント、こっからです」
 ヒーローインタビューを終えると、応援に来てくれていた両親のところへと真っ先に向かい、ウイニングボールを手渡している。ご両親は何と? と尋ねると「別にこれと言って言われてないですけど…」と答えたあとにこう続けた。
「こっちが『ありがとう』って感じですね。はい(自分から)言いました」
 心配してくれたこと。支え続けてくれたこと。復活のマウンドを観るために高知まで駆け付けてくれたこと。そして、これからもっと頑張るから、という強い思いを。いろんな気持ちのこもった「ありがとう」をボールに託して。




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2013/04/23(Tue)

『「バックがみんな『がんばれ! がんばれ!』って」』

四国アイランドリーグplus 2013コカ・コーラ杯 前期公式戦
2013.4.20. 高知ファイティングドッグス 0‐4 香川オリーブガイナーズ 2回戦 <高知球場> 観衆 131人

2013.4.20. 渡辺靖彬(香川OG)
顔に跳ね返る雨水を受けながら高知FDを完封した渡辺靖彬(香川OG)

香川OG 110 011 000|4
高知FD 000 000 000|0

勝 渡辺 1勝0敗
敗 山中 0勝3敗

バッテリー
香川OG 渡辺 - 大川
高知FD 山中、松本、野原 - 安田

本塁打
香川OG 
高知FD


 開幕以来5連敗と高知ファイティングドッグスにまだ白星がない。高知球場で行われるホームゲーム2連戦の2戦目、香川オリーブガイナーズを相手に今季初勝利を目指した。高知FD先発はこれが早くも3度目の先発マウンドとなる山中智貴(24歳、ツネイシホールディングス)、香川OGは今季初先発の渡辺靖彬(21歳、京都ジャスティスベースボールクラブ)である。
 試合前から小雨が降るなか、18時ちょうどにプレーボールが掛かる。1回表、香川OGは山中の立ち上がりを捉えると、一番・小栗健太(24歳、広島修道大)が一塁への内野安打で出塁する。一死一、二塁として四番・桜井広大(29歳、阪神タイガース)は一、二塁間を破る適時右前安打を放ち、1点を先制した。
 香川OGは2回表にも七番・北村祐(26歳、三重スリーアローズ)の右前安打、九番・涌嶋大希(24歳、福山大)の右前安打により二死一、三塁とチャンスを作る。一番・小栗の打球は山中のグラブをかすめながらも中前に抜け北村が生還、2点目を挙げた。
 高知FDは4回裏、一死から四番・河田直人(21歳、愛知学院大中退)の右前安打、五番・迫留駿(22歳、京都フルカウンツ)の中前テキサス安打により一死一、三塁と一打逆転のチャンスをつかむ。だが、後続が併殺打に倒れ得点を奪うことができない。
 5回表、香川OGは一番・小栗が今日3安打目となる遊内野安打で出塁する。一死一、二塁として四番・桜井は初球を右中間へ運ぶ適時二塁打を放ち、香川OGが3点目を挙げた。
 5回3失点の山中に代わり、6回表のマウンドには高知FDの二番手・松本英明(24歳、関西メディカルスポーツ学院)が登る。だが、先頭の七番・北村に中前安打を許すと、九番・涌嶋大希(24歳、福山大)に遊内野安打、一番・小栗に四球を与え一死満塁のピンチを迎える。続く二番・生田目翔悟(22歳、JFE東日本)が押し出し四球を選び、香川OGが4点目を追加した。
 4点のリードをもらった渡辺は、試合が進むにつれてキレの良いストレート、チェンジアップを低目に決め続ける。7回、8回と先頭打者にヒットを許しながらも後続を断ち切り、無失点投球を続けた。
だが9回裏、渡辺が制球を乱し、四番・迫留、五番・梶田宙(30歳、愛知大)に連続四死球を与える。九番・安田開(19歳、京都国際高)にも一、二塁間を破られ一死満塁、一打同点のピンチを迎えたが、最後の打者を一邪飛に打ち取り、高知FDに最後まで得点を許さなかった。
 香川OGが0-4で高知FDを下し、今季5勝目。渡辺が今季初勝利を完封で手にした。この結果、香川OGは貯金を1とし、徳島ISと並ぶ2位に浮上している。高知FDは山中が3敗目、開幕から6連敗と悪い流れが続いている。


『「バックがみんな『がんばれ! がんばれ!』って」』

 あれは確か、香川オリーブガイナーズのホームゲーム今季2戦目となった高知ファイティングドッグス戦(4月14日、レクザム)の試合前である。ダグアウト前でたまたますれ違った渡辺靖彬(21歳、京都ジャスティスベースボールクラブ)が声を掛けてきた。
「次、結果出したら取材して下さいね!」
 本来、自分からガツガツ前に出てきてアピールするようなタイプではない。2日前の12日に21歳になったばかりの若さである。ルーキーシーズンとなった昨年を振り返っても、伊藤秀範コーチや先輩からイジられていることこそあれど、積極的に我を出すような場面はほとんど記憶にない。渡辺にしては「珍しい」と思った。
 オープン戦から「絶好調!」と言えるような状態にはなかった。結果を残さなくてはいけないプレッシャーに苛まれ、自らを奮い立たせているのだな、と直感し「…追い込まれてるな?」と聞くと、こう答えた。
「そうでもしないと…」
 前日行われた対徳島インディゴソックス前期1回戦(4月13日、レクザム)で、今季初登板している。だが、結果は残せなかった。四番手として1イニングを投げ2失点(自責1)、0‐5とワンサイドだった展開をさらに悪化させている。しっくりきていない理由は自分でも分かっていた。
「制球(力)もそうですし、チェンジアップの落ちも…。去年からずっと力強さっていうか、真っ直ぐで勝負もできるストレートをずっと目指してやってきて。確かにそのストレートが速くなってきたことはなってきたんですけど、それが逆にほかの球種のバランスを崩したりだとか。で、また気持ちの面でもちょっと変化もあったりとかして。インディゴ戦はとにかく、何が悪いっつったら先頭フォアボール出してるんスよ。で、ノーアウト一、二塁になってからヒット打たれてっていう状況だったんで。別に球も走ってたし、変化球も良かったんですけど。もう『そこだ!』ってずっと思ってて」
 ちょうど一週間ぶりに与えられた汚名返上のチャンスは、前回勝利している高知FD戦ビジターゲームでの先発登板だった。課題はもちろん先頭打者を出塁させないことである。
「とにかく先頭のフォアボール、四死球を。ヒットOKで『四死球だけはなくそう!』ってテーマでやってました」
 試合前から細かな雨が降り続いている。シートノックもセレモニーも中止となり、ただ試合開始予定時刻の午後6時を待つだけの時間が流れる。試合開始45分前、左翼の芝生の上をダッシュしては引き返す、オリーブグリーンのジャンパーを着た渡辺の姿があった。
 2回裏、先頭の四番・河田直人(21歳、愛知学院大中退)に一、二塁間を破られたものの、一気に二塁を狙った暴走に助けられ、走者を塁上にとどめずにすんだ。以降、6回まで先頭打者を切り続けている。味方打線も初回から得点を奪ってくれた。6回までに得た4点のリードがピッチングの勢いにますます拍車をかけていた。
「点数は獲ってくれてたんで『どんどん行こう!』って。丁寧に、丁寧になりすぎずに。で、逆にランナーがスコアリングポジションにいたときは逆に『丁寧に。低目に』っていう気持ちで投げてました」
 午後7時半を過ぎ、雨が激しくなった試合中盤以降、投球は逆にキレを増した。ストレートがビシビシと低目に決まり、チェンジアップが面白いように沈む。
「腕が振れるようになって。5、6回辺りから。それと同時にやっぱチェ(チェンジアップの意)もいいボールが。でも、今日は真っ直ぐですかね。もうほとんど。ちょっと浮いたボールでもファールフライに後半はなってた。去年の成果がちょっとずつ」
〝去年の成果〟とは、経験も体力も、両方である。
 8回を無失点のまま投げ終えて、投球数は103を数えている。もちろん完封は意識している。だが、4時間以上振り続けた雨は、グラウンドコンディションを最悪の状態にしていた。マウンドのちょうど左足を踏み出す辺り、そこに水たまりができている。
「足が着くときに自分に返ってくるんですよ、水が全部。で、もう目が…。毎球こんなに(ドロドロに)なって。でも、バックがみんな『がんばれ! がんばれ!』って声掛けてくれたんで。頑張ろうと思って」
 課題であった先頭打者への四死球を許したのは9回のみである。2つの四死球と1本のヒットを許し、二死満塁のピンチを迎えた。完封勝利まであとワンアウト。しかし、もし本塁打が出れば同点となってしまう場面である。一番・村上祐基(25歳、立正大)を2球で2ストライクに追い込む。3球目、一塁側のファールグラウンドに上がったフライをキャプテンががっちりとつかんだ。
「ホッとしてます。でも、これだけで終わらないように。ここからなんで、シーズンは。それを間違えちゃいけないと思うんで。プラスに捉えるところはプラスに捉えて。どんどん自分のピッチングをしていきたいです」
 雨のなか、外野の芝生をダッシュしながら思っていたことがある。
「前の試合が前の試合だったんで(4月17日、対徳島IS前期3回戦、5‐8で逆転負け)。とにかく『抑えよう!』、『勝つ!』って思ってました。『とにかく勝つ!』って。中野(先発・中野耐)がいいピッチングしたんですけど。0点に抑えて、そこから逆転されて、勝ちゲームを落としたんで。悪い流れを食い止めて。『今日、明日、2連勝しよう』って話してたんです。又吉さんと」
 明日(21日)先発予定の又吉克樹(22歳、IPU環太平洋大)とそんな約束を交わしていた。結果を残すのも、信頼を手にするのも自分自身だ。だが、孤独なマウンドに足を踏み入れる前、好投しながら結果の残せなかった年下の投手の思いや、あす先発する年上の投手の言葉まで噛みしめていた。




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2013/04/18(Thu)

『分厚い信頼感』

四国アイランドリーグplus 2013コカ・コーラ杯 前期公式戦
2013.4.17. 徳島インディゴソックス 8‐5 香川オリーブガイナーズ 3回戦 <JAバンク徳島スタジアム> 観衆 246人

2013.4.17. 岡崎稔弘(徳島IS)、勝ち越しの右前適時打
8回裏一死満塁、岡崎稔弘(徳島IS)が2点適時打となる右前安打を放ち、再逆転に成功する(投手:酒井〈香川OG〉)

香川OG 000 300 020|5
徳島IS 000 004 04×|8

勝 井川 1勝0敗
S シレット 0勝0敗1S
敗 永川 0勝1敗

バッテリー
香川OG 中野、後藤、田村、永川、酒井、篠原 - 有山
徳島IS 小松、安里、入野、シレット - 小野、山城

本塁打
香川OG 
徳島IS 大谷龍1号3ラン(6回、後藤)


 徳島インディゴソックスと香川オリーブガイナーズとの対戦は、早くもこれが3戦目になる。1勝1敗のタイで臨む第3戦の先発は、徳島ISが広島から育成派遣された小松剛(26歳、広島カープ育成)、香川OGが2年目の中野耐(19歳、天王寺高)と、共に今季初先発のマウンドとなった。
 4回表二死、四球で歩いた走者を三塁に置いて六番・大原淳也(28歳、横浜DeNAベイスターズ)が右中間を深々と破る。一気に三塁を陥れ、香川OG最初の安打が先制の適時三塁打となった。続く七番・北村祐(26歳、三重スリーアローズ)も四球を選ぶと、二死二、三塁として初スタメンの八番・有山裕太(22歳、奈良産大中退)が右中間に2点適時安打を放つ。香川OGが3点を先制した。
 6回裏、香川OGベンチは先頭の九番・岡崎稔弘(23歳、豊浦高)を歩かせたところで中野に代わり、左サイドスロー・後藤真人(25歳、アークバリアドリームクラブ)をマウンドに送る。ここまで散発2安打、無得点に抑え込まれていた徳島ISだったが、二死一、三塁と走者をため、四番・大谷龍次(24歳、ロッテ育成)が左中間スタンドに1号同点3ランをたたき込む。ペースを乱された後藤は連続四死球で走者をため、二死満塁のピンチを迎える。香川OGベンチは三番手に田村雅樹(23歳、中部大)を送るが、八番・小野知久(24歳、和歌山簑島球友会)に押し出し四球を与え、逆転を許した。
 6回3失点の小松に代え、7回表から徳島ISは二番手に安里基生(23歳、沖縄国際大)を送る。3‐4と1点ビハインドで迎えた8回表、香川OGは2本のヒットで一死一、二塁のチャンスをつかむ。八番・有山は右前に同点打、さらに一死一、三塁として途中出場の九番・甲斐弘樹(21歳、三重総合高)が一、二塁間を破る勝ち越しの右前適時打を放ち、5‐4と逆転に成功した。
 しかし8回裏、この回からマウンドに登った香川OGの四番手・永川光浩(25歳、広島カープ育成)の制球が定まらない。連続四球により無死一、二塁と走者をためる。一死一、二塁としたところで永川に代わり、五番手・酒井大介(26歳、長崎セインツ)がマウンドに登った。
 徳島ISは代打・酒井亮(23歳、明治学院大)が四球を選び一死満塁のチャンスをつかむ。九番・岡崎はカウント2‐0からの3球目を右前へ運ぶ2点適時打を放ち、6‐5と試合をひっくり返した。さらに一番・吉村旬平(22歳、光明相模原高)も左中間への2点適時二塁打で続く。この回一挙4点を奪い、再び試合をひっくり返した。
 9回表、香川OG最後の攻撃を徳島ISのクローザー・シレット(ドミニカ共和国、25歳、カープ・ドミニカアカデミー)が三者凡退に切って獲る。逆転また逆転のスリリングな展開となった試合は、徳島ISが8‐5で香川OGを下し今季2勝目、勝率を5割に戻した。八回表に登板し、二死二、三塁のピンチを抑えた三番手・入野貴大(24歳、愛媛MP)が今季初勝利、シレットが初セーブを記録した。
 香川OGは徳島ISに連敗を喫し、星勘定を2勝2敗の5割とした。同率2位で並んだ徳島ISと香川OGが首位・愛媛マンダリンパイレーツを1ゲーム差で追う。


『分厚い信頼感』

 香川オリーブガイナーズが3点を先制すれば、徳島インディゴソックスが豪快な一発から4点を奪い返す。再び香川OGが連打で2点を奪い返し逆転すれば、またまた徳島ISが連続タイムリーで4点をもぎ取る。平日の水曜日、17時試合開始のナイトゲームである。徳島ISファンにとっては主催者発表された246人しか観戦できなかったことが悔やまれてならない。そんなゲームであったことだろう。
 香川OGに3点を先制された嫌な流れをまず断ち切ったのは、徳島ISの四番・大谷龍次(24歳、ロッテ育成)の一振りだった。カウント1‐0からの2球目、真ん中にきたストレートを迷いなく叩いた。
「チャンスだったんで。(初球を狙うのは)自分の持ち味でもありますし。久し振りの感触だったので、思わず興奮しましたね! 感触とバットに当たった音と「これで行かなかったらダメだ!」って感じですよね。打った瞬間に「行った!」と思いました。確実に」
 すっかり陽の落ちた蔵本の夜空に舞い上がった打球の軌道を見たあと、一塁側ダグアウトに向かって小さく右拳を突き上げた。
 八回裏、徳島ISが1点ビハインドで迎えた一死満塁の場面で、左打席に入ったのは九番・岡崎稔弘(23歳、豊浦高)である。実は7日の開幕戦(対香川OG前期1回戦)でも満塁の場面で2度、打席に立っている。だが、2打席とも内野ゴロに打ち取られ、得点することができなかった。
「開幕戦でチャンスに回って来て、ちょっとバタバタして。その開幕戦あとから『チャンスで回ってくる。チャンスで行こう!』という気持ちの整理がついて。前の香川戦(4月13日、前期2回戦〈レクザム〉)でも打ってるんですけど、準備ができてましたね」
 次のゲームで早くも訪れた一死満塁のチャンスで左前適時打を放ち、自ら呪縛を解いている。
「とにかくチャンスで回ってくることが多いんで、今」と、戸惑ったような表情を見せながらも、勝負強さは着実に身に付き始めている。試合の中で初めて経験できることがある。5年目にしてレギュラーの座をつかみ取った苦労人だからこそ、公式戦の1打席1打席で得るものは多く、ムダにできる打席などない。
 前年度王者を相手に2度試合をひっくり返しての快勝は、今年の徳島ISの攻撃力がダテではないことの証しだろう。去年8月の長内孝コーチ就任以降、選手たちは秋季練習、自主トレ、合同自主トレ、キャンプと、黙々とバットを振り込んできた。そこに根鈴雄次アシスタントコーチが加わり、体制や練習環境は申し分ない。全体練習が始まる1時間半以上前、8時過ぎから行われている「アーリーワーク」に参加することが、今では当たり前のようになっている。
 取材してみれば、ゲームの中で長内コーチの声がいかに選手たちに影響を与えているかがよく分かる。今日のヒーロー2人もそうだった。大谷が言う。
「前の打席で中途半端だったので、長内さんから『四番なんだから、もっとしっかり思い切って行け!』って一言があって。ホームランとまでは思ってなかったですけど、三塁ランナー還しながら、三塁打、二塁打と長打を。その中で最高の形ができた」
 岡崎も同じである。
「長内さんが『1球目から強気に行け!』と言ってくれたんで。もう意気に感じて。みんなつないでくれたので『ストライク来たら行こう!』と思って打席に立ちました」
 特別な一言ではない。だが、打席に向かう選手たちの耳にははっきり届いている。毎日毎日、選手たちを一番近くで見ているからこそ、分厚い信頼感と共にその声は選手たちの胸に響く。




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2013/04/17(Wed)

『「それもありましたし、そうやって気持ちだけはもちながら」』

四国アイランドリーグplus 2013コカ・コーラ杯 前期公式戦
2013.4.14. 香川オリーブガイナーズ 5‐2 高知ファイティングドッグス 1回戦 <レクザムスタジアム> 観衆 776人

高知FD 001 010 000|2
香川OG 010 040 00×|5

勝 又吉 2勝0敗
敗 山中 0勝2敗

バッテリー
高知FD 山中、井川 - 屋宜、夏山
香川OG 又吉、酒井 - 大川

本塁打
高知FD 村上1号ソロ(3回、又吉)
香川OG 桜井1号3ラン(5回、山中)


 前日、香川オリーブガイナーズはホーム開幕戦で大敗を喫し、高知ファイティングドッグスは敵地で3連敗目を喫した。今季初対戦のカードとはいえ、早くもお互いに絶対に落としたくないゲームである。香川OGは開幕戦で初白星を挙げたサイドスロー、又吉克樹(22歳、IPU環太平洋大)を、高知FDはソフトバンク戦(4月8日、高知)に先発し、黒星スタートとなった山中智貴(24歳、ツネイシホールディングス)を先発マウンドに送った。
 2回表、無死一、二塁のピンチを無失点で乗り切った香川OGは、2回裏一死から六番・大原淳也(28歳、横浜DeNAベイスターズ)が左中間を破る二塁打で出塁する。七番・北村祐(26歳、三重スリーアローズ)が右翼線への適時二塁打で続き、1点を先制した。
 だが、高知FDもすぐさま反撃を見せる。3回表一死、二番・村上祐基(25歳、立正大)が左翼スタンドにライナーでたたき込む1号同点ソロを放ち1‐1の同点に追い着いた。
 風もなく晴れ間が見られたレクザムスタジアムの空だったが、4回裏に入ったころから雨が落ち始める。5回表、高知FDは先頭の八番・曽我翔太朗(23歳、ノースウエストフロリダ州立大)が中堅手の頭上を越える三塁打。さらに2つの四球で無死満塁としたあと、三番・河田直人(21歳、愛知学院大中退)の二ゴロの間に曽我が還り、高知FDが2‐1と勝ち越しに成功する。
 しかし5回裏一死、香川OGは一番・小栗健太(24歳、広島修道大)が二遊間への内野安打、三番・島袋翔伍(23歳、ビッグ開発ベースボールクラブ)の中前安打により二死一、三塁とチャンスを拡げる。続く四番・桜井広大(29歳、阪神)は初球を左中間スタンドにたたき込む逆転3ラン。香川OGが5‐2と試合をひっくり返した。
 又吉は7回まで10奪三振と高知FD打線から三振の山を築く。8回表一死一塁の場面で香川OG・西田真二監督は又吉に代え、クローザー・酒井大介(26歳、長崎セインツ)を投入。8回表を無失点で切り抜ける。だが9回表、先頭の九番・夏山翔太(19歳、呉港高)に右前安打を許すと、二番・村上の打球を右手に受け、一塁側ダグアウトを一瞬ヒヤリとさせる。しかし、最後の打者を空振り三振に切って獲り、高知FDの逆転を許さなかった。
 香川OGが5‐2で高知FDを下した。又吉が早くも2勝目、酒井が今季初セーブを挙げている。高知FDは開幕以来4戦を終えて、いまだ勝ち星がない。


『「それもありましたし、そうやって気持ちだけはもちながら」』

 すでに試合開始時刻まで45分を切っている。セレモニーを前に、選手たちはまだダグアウトにも姿を見せておらず、ベンチ裏で思い思いの時間を過ごしていた。
 たった1人だけダグアウト左奥のベンチに深く腰掛けていた選手がいる。両手の拳をグッと握りしめ、正面を鋭い形相で凝視していた。とても声を掛けられそうな雰囲気ではない。桜井広大(29歳、阪神タイガース)である。
 開幕からまだ2試合を終えただけとはいえ、フラストレーションがたまり始めているのは間違いなかった。開幕戦(4月7日、JAバンク徳島スタジアム)で遊失策により出塁するも、右足ふくらはぎの違和感により大事を取って交代している。四番・DHとして出場したきのうの試合(4月13日、対徳島IS前期2回戦〈レクザム〉)では3打数無安打、4打席目にはシレット(ドミニカ共和国、25歳、カープ・ドミニカアカデミー)の速球に手が出ず、見逃し三振を喫していた。打率はまだ「0」のままである。NPB復帰を最大の目標に掲げるガイナーズの四番打者のバットから、快音はいまだ聞かれずにいた。
 実はオープン戦期間中もまったく精彩を欠いていた。3月3日に行われた対Honda戦(坊っちゃん)で3安打を放ったものの、対愛媛マンダリンパイレーツ戦(3月8日、観音寺)では5打数無安打、3三振を喫している。取材したオープン戦中、桜井が出場した6試合(阪神二軍‐アイランドリーグ選抜戦、香川OG戦5試合)を精査してみても、成績は17打数2安打、打率・118しか打っていない。しかも、気になるのは見逃し三振の多さである。
 3打数無安打、その上2つの見逃し三振に終わった信濃グランセローズ(BCリーグ)戦(3月21日、豊中サンスポ)の試合後、西田真二監督は桜井についてこう語っている。
「波がありますよね。そりゃね、バッティングはね。ただまぁ、もう少し貪欲にさ。ファーストストライクから打って行くとかね。1球で…ファールが多いよね! まだね」
 本当に勝負を掛けなければならない2年目のシーズン開幕を前に、明るい光が見えてこない。そこへ来て、開幕戦での早々の交代である。「初めからそのつもりだった」(西田監督)とはいえ、足の不調はさらに見ているものの不安を増大させている。「まだ3戦目だから」と言えるような余裕はまったく感じられず、試合前に独り集中している姿には、はっきり危機感が感じられた。
 4回途中からポツポツと降りだした雨は5回裏途中から大粒となり、スタンドの観客を屋根の下に避難させる。強い風が右翼から左翼方向に吹きつけ、スコアボード上で強くはためいている薄いブルーのチャンピオンフラッグをびしょびしょに濡らしていた。
 3度目の打席となったのは、1点ビハインドで迎えた5回裏二死一、三塁の場面である。高知FD先発・山中智貴(24歳、ツネイシホールディングス)の投げた初球、135㌔のストレートを左中間に弾き返し、打球は軽々とフェンスを越えた。大きなガッツポーズを作るでもなく、淡々とダイヤモンドを1周し、一塁側ダグアウトに迎え入れられている。今季初安打が価値ある逆転3ランとなった。
「ここまで無安打、だいぶイライラもたまっていたのでは?」と聞いた。
「そうなんですよね。それもありましたし、そうやって気持ちだけはもちながら、でもそれを思い過ぎると余計崩れてくるんで。ま、そこは冷静にというか。集中して打席に入りましたね」
 最初の打席で倒れた三ゴロは悪い当たりではなかった。徐々にタイミングは合い始めており、迎えた最大のチャンスで集中をピークに持って行った。
「(球種は)真っ直ぐですね。真ん中じゃないですか? その前の打席(二死二塁の場面で中飛)もホントに甘い球を打ち損じてた。それも得点圏やったんで。…で、まぁそのときの感覚というのがありましたから。しっかり修正できたかな? っていう感じですかね。ピッチャーの球筋も分かってましたから。打ち損じだけはしないようにと思って。で、まぁ初球、ファーストストライクから行ってやろう! と思って」
 打者の好不調を見分けたいときに分かりやすい1つの目安がある。初球から積極的にスイングを入れているか、いないか。調子を落としている打者はファーストストライクを見逃しやすい。逆に調子が上がっている打者からは「積極的に初球から行ってやろうと思った」という声がよく聞かれる。桜井もご多分に漏れず、初球を狙おうとするスイッチが入っていた。積極性が蘇りつつある。
 すっかり雨が上がった試合後、西田監督が報道陣からの囲み取材に応える。
「投げる人が投げて、打つべき人が打ったっていうかな。まぁ桜井の3ランが効きましたね。ああいうところで大きいホームランが出るっていうのはね、お客さんも望んでいることですから。ファンの人が喜ぶ3ランだった。そういうことですね」
 雨に濡れながら一塁側スタンドのファンが「ここで一発!」と願った場面で、しっかり仕事をしてみせたのは「さすが桜井!」と言ったところだろう。8打席目に待望の一発が最高の形で飛び出した。3戦目でのヒーローインタビューなら全然遅くない。




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2013/04/14(Sun)

『「抑えたい」と「勝たせたい」』

四国アイランドリーグplus 2013コカ・コーラ杯 前期公式戦
2013.4.13. 愛媛マンダリンパイレーツ 7‐1 高知ファイティングドッグス 1回戦 <新居浜市営球場> 観衆 1,042人

2013.4.13. 小林憲幸(愛媛MP)
2年連続開幕投手、2年連続白星発進の小林憲幸投手(愛媛MP)

高知FD 100 000 000|1
愛媛MP 120 300 01×|7

勝 小林 1勝0敗
敗 野原 0勝2敗

バッテリー
高知FD 野原、グルジョン、松本 - 屋宜、夏山
愛媛MP 小林、中村、西川 - 宏誓、飯田

本塁打
高知FD 
愛媛MP 


 愛媛マンダリンパイレーツは1週間遅れての開幕となった。愛媛大学チアリーディング部のオープニングアクト、新居浜出身のアーティストによる国家独唱、地元ゆるキャラの登場、また球場入り口前にはB級グルメの屋台村がオープンするなど、非常に明るい雰囲気のなかでオープニングゲームがスタートしている。対戦相手はここまでソフトバンク三軍相手に連敗を喫している高知ファイティングドッグスである。
 高知FDは初回、愛媛MP先発・小林憲幸(28歳、元千葉ロッテ育成)の立ち上がりを捉える。一死、今季主将を務める二番・村上祐基(25歳、立正大)が一塁手のミットをかすめながら右前にクリーンヒットを放つ。二死一塁から四番・安峻亨(アン・ジュンヒョン、28歳、韓国)の中越え適時二塁打で1点を先制した。
 だが1回裏、高知FD先発・野原慎二郎(28歳、摂南大)の制球が定まらない。愛媛MPは3つの四球で二死満塁とすると、六番・鶴田都貴(22歳、東京国際大)も押し出し四球を選び、難なく同点に追い着いた。
 2回表、2本の安打で二死一、三塁と勝ち越しのチャンスをつかんだ高知FDだったが、右翼ライン際に頭から飛び込んだ右翼手・樋口拓平(26歳、ジェイプロジェクト)のファインプレーの前に走者を還すことができない。
 愛媛MPは2回裏、四球で歩いた四ツ谷良輔(19歳、深谷商)を二塁に置いて、二番・白川淳一(19歳、米子松陰高)の左翼線適時安打で勝ち越しに成功する。さらに二死二塁から三番・藤長賢治(25歳、大体大)が左翼線への適時二塁打で続き3点目を奪う。
 愛媛MPは4回裏にも二番手左腕・グルジョン(ファン・グルジョン、23歳、ドミニカ)から二死満塁とし、四番・金城雅也(24歳、三重スリーアローズ)の走者一掃となる右翼線二塁打で3点を追加、リードを5点に拡げる。8回裏にも樋口の右翼越え三塁打、一番・高田泰輔(23歳、新田高)の中前テキサス適時打で追加点を挙げ、試合を決定付けた。
 7回を1失点で乗り切った先発・小林に代わり、8回を左腕・中村太紀(22歳、全播磨硬式野球団)が、9回を今季、古巣からNPB復帰を目指す西川雅人(30歳、オリックス)が無失点で凌いだ。愛媛MPが7‐1で高知FDを下し、開幕白星発進を決めた。小林が今季初勝利をマークしている。
 高知FDは開幕以来3連敗と、昨年に続く苦しいスタートとなった。


『「抑えたい」と「勝たせたい」』

 開幕戦のマウンドはやはり難しい。愛媛MP先発・小林憲幸(28歳、元千葉ロッテ育成)は、2年のNPB所属期間を除きこれがアイランドリーグ7年目、2年連続での開幕マウンドである。初回から2本の長短打で1点を奪われ、苦しい立ち上がりとなった。明らかに〝カタイ〟。周りからの声を聞くまでもなく、平常心を保てていないことは自分自身でもよく分かっていた。
「ちょっと入りすぎちゃいましたね。もっとリラックスしてれば良かったんですけど、とにかくもう『抑えよう、抑えよう』って。気持ちが行き過ぎて固かったですね。自分でも『オレ、固ぇなあ!』。金森さん(敬之)とか西川さん(雅人)にも『固いよ!』って」
 早くも2度目の先発となった高知FD、野原慎二郎(28歳、摂南大)もまったく普段の投球ができず、試合は1‐1の振り出しに戻る。序盤の勝負の分かれ目となったのは、2回を巡る攻防だった。
 2回表、高知FDは先頭の五番・迫留駿(21歳、京都フルカウンツ)が初球をたたき、一、二塁間を破る。続く六番・曽我翔太朗(23歳、ノースウエストフロリダ州立大)が初球を打ち上げ、捕邪飛に倒れた。
 ここで一塁側ダグアウトから萩原淳コーチがマウンドへと向かった。球数はまだ15球しか投げておらず、取り立てて小林にアクシデントがあるようにも見えない。試合後、あの場面の理由を聞いた。
「代えようと思って。(理由は)良くないから。いやもう、顔(色)が悪かったからね! 間を取るって言っても、あんまり耳に入らないですよね。『おまえみたいな根性無しはもう代える!』って。結果、根性無しですけどね」
 マウンドで強引に注入されたカンフル剤に小林が苦笑いを見せる。しかし、萩原が本当に伝えたかったことはそれだけではなかった。
「でも、それは冗談として、やっぱホントに早いじゃないですか。手、出してくるの。それなりにストライクゾーンにアホほど投げるから『もっと考えなさい』っていうのと。自分らのペースで投げてるように見えなかったから。もっと相手に向かって『はいどうぞ』じゃなくて、自分らでペースを作るっていう…」
 明らかにファーストストライクから勝負に来ている高知FDに対し、あまりにもバッテリーが試合の主導権を握れていない。焦ってストライクばかりを獲りに行くのではなく、ボールから入ってもいいのだ。「一度、間を取る」というよりは、今ここでやらなくてはいけないことを確認させていた。
 二死二塁となり、バッターは新入団の八番・宮坂基也(24歳、仙台大)である。やはり初球を捉えた打球が一、二塁間を破る。比較的浅めの守備位置を採っていた右翼手・樋口拓平(26歳、ジェイプロジェクト)だったが、ファンブルしてしまいバックホームできない。しかし、あらかじめ樋口の位置を確認していた三塁コーチャーは、二塁走者・迫留に「ストップ」を掛けた。二塁走者・迫留も三塁を回ったところでスピードを落とす。もちろん結果論でしかないが、もし勝負を掛けていれば勝ち越しの1点は高知FDに入っていたはずである。「あぁ…」という喪失感と「助かった!」という安堵感が球場を交差した。

 試合前夜、樋口は小林、そして遠く埼玉から応援に駆け付けていた小林の両親と共に夕食に出かけている。食べたのは明日の勝利を祈念しての焼き肉である。だが、小林は肉にほとんど手を付けていない。
「僕は肉、食ってないです。ホントにこ~んなちっちゃいタン1枚だけ。肉食うと(身体が)重くなるから。お酒も一滴も飲まないし」
 すでに気持ちが臨戦態勢に入っている小林に対し、樋口はその逆である。
「そうなんスよ! 僕だけガッツリ頂きました。ノリさんはもうルーティーンを守るんで。僕は毎回、試合があるんで。いつも通りに」
 焼肉はあしたに向けての良い活力源となった。だが、そういう小林を見ていたからこそ、開幕初戦のマウンドを勝利で飾って欲しい気持ちも人一倍強かった。
 
 2回表、二死一、三塁。九番・屋宜宣一郎(23歳、沖縄国際大)の打球は右翼線際へのライナーとなった。突っ込んできた樋口が躊躇することなく頭から飛び込む。伸ばした左手は地面に振れる前に打球をすくい上げており、高知FDは勝ち越しのチャンスを逸した。勝負どころでピンチを救う値千金のダイブだった。
「ノリさんを絶対勝たせたかったんで。今までの僕なら、あれは行けなかったと思います」
 そこには自身にしか分からない、しかし確かに実感できる2年目の進化がある。
 2回裏に2点を勝ち越したことで、試合の流れは一気に愛媛MPへと傾いて行った。空回りしてしまったが「抑えたい」とマウンドで奮闘したエースと、彼を「勝たせたい」と守備で最高の仕事をやってのけた樋口の思いが、勝利への糸口を手繰り寄せた開幕戦だった。




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