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    Hirofumi TAKATA

    Author:Hirofumi TAKATA
    スポーツライター。
    現在『週刊ベースボール』『Baseball Clinic』『熱中!野球部』『野球太郎』『ホームラン』等の各雑誌、スポーツ紙『デイリースポーツ』などにおいて、独立リーグ、高校野球を中心に取材、執筆活動を続けている。
    4月2日生まれ。A型。

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2012/07/24(Tue)

互いの思惑

四国アイランドリーグplus 2012コカ・コーラ杯 後期公式戦
2012.7.22. 愛媛マンダリンパイレーツ 3‐7 香川オリーブガイナーズ 後期3回戦 <新居浜市営球場> 観衆 815人

香川OG 002 102 011|7
愛媛MP 000 000 030|3

勝 山野 10勝3敗
敗 小林 9勝5敗

バッテリー
香川OG 山野、西村、酒井 - 星野
愛媛MP 小林、入野 - 橋本

本塁打
香川OG 星野2号2ラン(3回、小林)、島袋5号ソロ(4回、小林)、ペレス3号3ラン(6回、小林)、桜井5号ソロ(8回、小林)
愛媛MP


 7月22日、リーグトップの9勝で並ぶエース同士が直接対決でぶつかる。愛媛マンダリンパイレーツ対香川オリーブガイナーズ後期3回戦は、酷暑の新居浜市営球場で午後2時プレーボールとなった。
 3回表、香川OGは愛媛MP先発・小林憲幸(27歳、元千葉ロッテ育成)からヒットで出塁した七番・ペレス(ウィルバー・ペレス、28歳、ドミニカ出身、ノースアメリカンリーグ)を一塁に置いて、八番・星野雄大(23歳、伯和ビクトリーズ)が左翼スタンドにライナーで飛び込む先制の2号2ランを放つ。
 愛媛MPも3回裏、打率.326と首位に立つ八番・藤長賢治(24歳、大体大)が右中間を破る二塁打で出塁し一死三塁のチャンスを作るが、あと1本が出ない。
 香川OGは4回表、先頭の四番・島袋翔伍(22歳、ビッグ開発ベースボールクラブ)が右中間へ5号ソロ本塁打を放ち、3点目を挙げる。愛媛MPも5回裏、六番・高田泰輔(23歳、新田高)の右翼線二塁打から二死三塁と得点圏に走者を進めるが、またもあと1本が出ないまま前半の攻撃を終えた。
 6回表も香川OG打線の猛攻が続く。一死から五番・桜井広大(28歳、元阪神)、六番・国本和俊(28歳、三重中京大)の連続安打のあと、七番・ペレスが左中間スタンドに3号3ランをたたき込む。8回表にも、この回先頭の五番・桜井が左翼スタンドにライナーで飛び込む5号ソロを放ち6‐0と、愛媛MPを大きく突き離した。
 7回まで愛媛MP打線を無得点に封じ込め続けた香川OG先発・山野恭介(20歳、広島カープ育成)だったが、疲れが見え始めた8回裏、四球と安打で一死一、三塁のピンチを迎える。ここで香川OGベンチは二番手として左腕・西村拓也(22歳、福岡レッドワーブラーズ)を送るが、三番・藤長に左翼手の頭上を越える適時二塁打を許し1点を失った。香川OGベンチは西村に代え、酒井大介(25歳、長崎セインツ)を投入するが、続く四番・ブレット(ブレット・フラワー、29歳、米独立・アメリカンアソシエーションリーグ)に適時中前打、五番・橋本将(36歳、元横浜)にも左犠飛を許し、愛媛MPが3点を返した。
 愛媛MPは8回6失点の小林に代え、9回表のマウンドに入野貴大(22歳)を送る。だが、先頭の二番・水口大地(22歳、長崎セインツ)を四球で歩かせると、三番・北村祐(25歳)に右翼線へ適時二塁打を浴び、1点を追加された。
 4点のビハインドを追う愛媛MPだったが、酒井の前に9回裏の攻撃を三者凡退で終え、逆転はならなかった。
 香川OGが7‐3で愛媛MPを下し後期2勝目、3位へと浮上した。愛媛MPは後期2敗目、貯金5で首位をキープしているものの、2位・徳島インディゴソックスとの差が3.5差に縮まっている。


『互いの思惑』

 バックネット裏で香川オリーブガイナーズ・吉田一郎編成部長が笑顔をかみ殺していた。
「打っとん、きのう残っとったメンバーばっかりやで!」
 愛媛マンダリンパイレーツ・小林憲幸(27歳、元千葉ロッテ育成)と香川OG・山野恭介(20歳、広島カープ育成)との最多勝対決は、思いがけない形で勝敗が決することとなった。新居浜市営球場は両翼91m、中堅118mと、比較的ホームランの出やすい球場ではある。だが、好投手・小林から4本塁打を放ち、14安打をたたき出しての快勝は、久し振りにガイナーズらしい猛攻だったと言える。
 実は前日(21日)、高知・四万十市で行われた高知ファイティングドッグス後期2回戦に帯同せず、調整を命じられていたメンバーが4人いた。先発予定の山野はもちろん、捕手である星野雄大(23歳、伯和ビクトリーズ)、野手ではペレス(ウィルバー・ペレス、28歳、ドミニカ出身、ノースアメリカンリーグ)、そして桜井広大(28歳、元阪神)がチームと離れ、高松に残ることを言い渡されている。
「真夏の連戦による疲労を考えて」という理由もあるだろう。だが、野手3名はゆっくり身体を休めていたわけではない。香川OGの選手たちが自主トレ場所として、夏冬問わず足を運ぶ、とある打撃練習場がある。そのビニールハウスのなかでティー打撃を行っていた。先制の2ランを放った星野が言う。
「地獄ですね! 50℃もありますからね。やったのが僕と桜井さんとペレス。おととい志度で練習やったんですけど雨で、午後から室内練習場になって。吉田さんから『午前中ちょっと打て!』と言われて、僕は2日連続だったんですけど。暑いんで短期集中です。ずっとやってたら倒れる。フォームチェックと、少ない数だからフルスイングして。いい感じで教えてもらいました」
「短期集中」と言っても、蒸し風呂のようなビニールハウスの中でゆうに1時間半はバットを振り続けた。最近、現れ始めている前に突っ込むクセに注意しながら、軸足である右足に体重をしっかり乗せ、前へと押し込む。吉田部長とマンツーマンで行ったティー打撃で、フォーム修正に取り組んだ。その3人がすべて本塁打を放ち、後期2勝目に貢献した。吉田部長も笑顔を見せるはずである。
 前期優勝を達成し、リーグチャンピオンシップへの出場権を得ている中で、西田真二監督は「勝ちながらの選手育成」を明言している。選手は使わなければ伸びない。いくら練習を積んだところで、本当に自信をつかむための最良の場はやはり実戦だ。土曜日のゲームでは「若手選手にも経験を与える」という方向性を採ったが、この愛媛MP戦においてはフルメンバーで「勝ちに来た」ということだろう。高知FD戦での引き分けドローに西田監督が、納得しているとは思わないが。
 先制点となった3回表、星野の2ランはカウント1ボールからの2球目を叩いたものだ。一塁走者・ペレスはスタートを切っていた。星野に出されたサインはヒットエンドランだった。
「エンドランのケースって僕、多くて。ヒットも結構出てるんですよ。監督や智勝さん(近藤智勝コーチ)にも言われるんですけど、そのときの方が力入らずに(バットが)楽に出てる。ポイントも前で捉えられるし。だから『エンドランぐらいの気持ちで打てばいいんじゃないか?』と、いつも言われてるんですけど」
 もちろん走者を進めるため右方向へ打つことを意識はするが、内角への球を無理に右方向へ持って行こうとすればファウルになる。内角なら内角で三遊間を抜けばいい、と思っていた。打った球は真ん中、やや内角よりのストレートである。自然に身体が反応し、うまく腰を回転させることができた。
「打った瞬間、『行ったな!』とは思ったんですけど、良かったですね。先制点だったし。先制点はやっぱり大きいと思うし、そうそうタイムリーが打てるピッチャーじゃないので。一発も難しいですけど、狙ったわけでもないんで。エンドランがいい方向に行ったかな、とは思います」
 この試合で香川OGは星野の一発を含めてヒットエンドランを計3回、バントエンドランを1回、盗塁を4回(2度成功)敢行している。盗塁に関してはジスボール(次の球で必ず実行)ではなく、走者の判断に任せて走らせたものもあるだろうが、足を絡ませる攻撃が非常に多かった。
 エース・小林で香川OGとの3戦目を落とした愛媛MP・星野おさむ監督が言う。
「向こうはプレーオフのことも考えてるから、いろんな作戦やってきたりして戦いづらいところはあるんだけど、それはいろんな含みがあってやってきてるはずなんで。それはいいとして、こっちが踊らされないようにしないといけない。すぐ踊らされちゃうんで、ウチのヤツらは…」
 6連勝が途絶え、流れが変わりかけているところでチームに細かいほころびが出始めている。走塁時のリード、守備体系、チームで持つべき共通意識のなかに、緩みかけている部分がたくさん見える。香川OGとは26日(宇和島)、28日(マドンナ)と、ホームでの連戦が待っている。それまでに早く修正を施さなければ。
「嫌な敗戦の仕方ではありますけど、しっかり調整していきます」
 そう語った。
 首位・愛媛MPの貯金は5、3位に浮上した香川OGとのゲーム差は3.5に縮まった。2位・徳島インディゴソックスと香川OGとの差はゲーム差なしの勝率差のみである。借金を抱えたままでは決して終わらないであろう香川OGと、後期に好スタートを切りながら、歯車がほんの少し狂い始めた愛媛MPとの間で、「これから」に向けて互いの思惑が見え隠れする。




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2012/07/18(Wed)

「だんだん1つになっているってことですよね」

四国アイランドリーグplus 2012コカ・コーラ杯 後期公式戦
2012.7.16. 愛媛マンダリンパイレーツ 7‐0 徳島インディゴソックス 後期2回戦 <浜公園川之江野球場> 観衆 488人

徳島IS 000 000 000|0
愛媛MP 000 311 20×|7

勝 小林 9勝5敗
敗 安里 3勝3敗

バッテリー
徳島IS 安里、永川、ジェイソン - 山城
愛媛MP 小林、入野、河原 - 橋本、宏誓

本塁打
徳島IS
愛媛MP


 7月17日、真夏の青空が広がった浜公園川之江野球場で、愛媛マンダリンパイレーツ対徳島インディゴソックス後期2回戦が行われた。後期開幕以来、いまだ無敗の快進撃を続ける首位・愛媛MPを2位・徳島ISが3ゲーム差で追う。愛媛MPは2試合連続完封、8勝を挙げているエース・小林憲幸(27歳、元千葉ロッテ育成)を、徳島ISは3勝を挙げている安里基生(23歳、沖縄国際大)をそれぞれ先発マウンドに送った。
 4回表、徳島ISは一死から三番・吉村旬平(21歳、光明相模原高)が中前安打を放つ。続く四番・大谷龍次(23歳、元ロッテ育成)の三ゴロを三塁手が後逸、走者をためる。五番・松嶋亮太(24歳、大分大)の打球は三塁側ファウルラインそばに転がる当たり損ねとなったが、これが内野安打となり一死満塁のチャンスをつかむ。だが、後続が倒れ無得点に終わった。
 ピンチを乗り切った愛媛MPは4回裏、三番・藤長賢治(24歳、大体大)が右前へのテキサス安打で出塁する。四番・ブレット(ブレット・フラワー、29歳、米独立・アメリカンアソシエーションリーグ)が三遊間への内野安打で続くと、五番・橋本将(36歳、元横浜ほか)が四球を選び満塁に。六番・高田泰輔(23歳、新田高)はきっちり中犠飛を上げ三塁走者が生還、先制点を挙げた。七番・大井裕喜(23歳、立正大)の右前安打で再び満塁とすると、九番・四ツ谷良輔(19歳、深谷商)の打った二ゴロを遊撃手へのトスを焦った二塁手がファンブルし、追加点を挙げる。一番・樋口拓平(25歳、ジェイプロジェクト)も中前に適時安打を放ち、この回3点を先制した。
 愛媛MPはさらに安里を攻め込む。5回裏、三番・藤長の右翼線二塁打を起点に二死一、二塁とすると、七番・大井の右前適時打で追加点を挙げる。6回裏にも二死満塁から五番・橋本の中前適時打で5点目を奪うと、二塁から流大輔(22歳、高知ファイティングドッグス)が一気に本塁を狙ったが、これは中堅手・吉村からの好返球により本塁上で憤死した。
 小林は無失点のまま7回表も徳島IS打線の攻撃を三者凡退に抑え込む。7回裏、徳島ISは安里に代わり、二番手に左腕・永川光浩(24歳、広島育成)をマウンドに送るが、六番・高田の右翼線二塁打、七番・大井の今日3安打目となる右前打により、たった2球で無死一、三塁のピンチを迎える。愛媛MPが一番・樋口の左前適時打などで2点を追加、リードを7点に拡げた。
 無失点のまま7回を投げ切った小林に代わり、8回表のマウンドには二番手・入野貴大(22歳)が登る。走者を出しながらも無得点で乗り切ると9回表、三番手として登場した河原純一(39歳、元中日ほか)が徳島IS最後の攻撃を三者凡退に封じ込めた。
 愛媛MPが7‐0で徳島ISを下し、後期負けなしの6連勝、2位との差を4ゲームに開いた。小林がハーラートップに並ぶ9勝目を挙げている。徳島ISは3連敗となり借金2、愛媛MPとの後期対戦成績が0勝2敗となった。


『「だんだん1つになっているってことですよね」』

 試合の流れを大きく分けることになったのは4回の攻防である。一死満塁のチャンスで得点することのできなかった徳島インディゴソックスと、そのピンチを乗り切って得た流れに乗って満塁のチャンスをつかみ先制、さらに相手のミスに乗じて3点を奪った愛媛マンダリンパイレーツとの違いが、この試合を決める大きなポイントとなった。
 愛媛MP先発・小林憲幸(27歳、元千葉ロッテ育成)の立ち上がりは決して良くはなかった。余分な力が入ってしまい、ストレートが高く浮いてしまう。徳島ISの打者も甘くなった球を捉えてはいた。だが、走者を出しながらあと1本が出ない。九番・大谷真徳(23歳、立正大)の打球は右翼手の正面を突き、ヒットで出塁した一番・神谷厚毅(26歳、名城大)は先発マスクを被った橋本将(36歳、元横浜)の正確な送球の前に二塁を奪えなかった。
 愛媛MPも制球で苦しむ徳島IS先発・安里基生(23歳、沖縄国際大)から2回裏、3回裏の二度、先頭打者を四球で出塁させている。しかし、いずれも得点につなげることができないまま、流れをつかみあぐねていた。
 そして4回表、徳島ISの攻撃、三番・吉村旬平(21歳、光明相模原高)がセンター前にヒットを放つ。続く四番・大谷龍次(23歳、元ロッテ育成)の打球が三塁手のエラーを誘った。ややバウンドが変化したゴロではあったが、三塁手が待って捕ろうとしたため後逸してしまった。五番・松嶋亮太(24歳、大分大)の打球も完全な当たり損ねである。三塁線に転がった打球を処理するためマウンドを駆け下りた小林が、ボールを拾い上げようとしたがつかみ損ねてしまった(結果は内野安打)。一死満塁、だが六番・根鈴雄次(38歳、元エクスポズ3Aほか)が一塁のインフィールドフライに倒れ、七番・中村亘佑(21歳、広島育成)の打球もレフト正面へのライナーとなって野手のグラブの中に収まった。愛媛MPがピンチを乗り切る。
 打球が左翼手のグラブに収まったのを確認すると、マウンド上の小林が振り向きざまに橋本の方を見た。帽子のつばをつまみ「すみません」の合図を送る。1ボール2ストライクからの4球目、勝負に行ったフォークボールが、やや浮いてしまったコントロールミスを詫びていた。
 自らのエラーによりピンチを広げてしまった三塁手の藤長賢治(24歳、大体大)が、帽子を脱ぎながら小林に声を掛け、ダグアウトへと下がって行く。ゆっくりとマウンドから降りていた小林を、今度は二塁手の流大輔(23歳、高知ファイティングドッグス)がつかまえた。インフィールドで2人が足を止め、何やら一言二言、言葉を交わし合っていた。試合後、あの場面について流に述懐してもらった。
「セカンドにランナーが行ったときに『結構、隙が多いな』と最近思いよったんですよ。徳島(戦)のときに。『頭に入れとって下さい!』っていうのと。まぁ『思い切って行きましょう! 調子いいですよ!』ってことを。松嶋でしたっけ? ボテボテの…。ああいうのが怖いんですよね。ああいうヒットっていうのが。ノリさん(小林)が絡んでたんで。エラーのあとだったんで、1個間を空けたかったんですけど、そしたら将さんがパッと(小林のそばに)行ったんで。『あ、さすがやな』と思って。それで僕も一言、言いに行きたかったんで」
 流との短い立ち話が終わりダグアウトに下がる小林を、チームメイトたちが次々と労う。4回裏の先頭打者として左打席に立った三番・藤長が「自分のミスは自分で取り返します!」と言わんばかりに初球を右前へ運ぶ。試合の流れは急速に愛媛MPへと転がり込もうとしていた。
 14日、ビジターで勝利した徳島IS戦で10安打、きのう高知ファイティングドッグス戦で15安打、そして今日も13安打と、愛媛MP打線の調子の良さはとどまることを知らない。打つだけでなく、次の塁を狙う姿勢も徹底できている。
「ピンチのあとにチャンスありで、そのあとにもしぶとい点の獲り方してね。ちょっと今日は、『こんなところがあかんかった』というのがあまりなかったなぁ」
 試合後、愛媛MP・星野おさむ監督が野手の仕事ぶりを素直に褒めたたえていた。4回裏の攻撃が始まる前に見た、あのやりとりについて聞いてみる。
「みんなが(試合のなかで)気にしてるところが、だんだん1つになっているってことですよね」
 昨年の監督就任当時、最初の目標として掲げていたのは「目に見えない『規律』のようなものを作りたい」だった。それがようやく選手たちそれぞれの中に、深く浸透し始めたのではないか。同じ目標と意志をもって、一枚岩となって戦える。目には見えないが、確かにつながっている。強いチームにとって必要不可欠な何かが生まれつつある。
 6連勝している要因の1つは「野手がしっかり足を動かしていること」と語った。攻撃においても、守備においても、である。技術以上にシーズンを通して戦うことのできる体力を身に付ける。それはこのチームの大きな指針でもある。1月の自主トレから継続してやり続けていることが、はっきり結果として出るのは本格的な夏が到来するこれからだろう。
「そう、そこはね。自信持ってるんだけど。選手たちがどう思ってるか…」
 それだけの練習をさせてきた自負は持っている。
 午前中の浜公園川之江野球場は風もなく、うだるような暑さとなった。強い日差しがジリジリと照りつける中、愛媛MPの投手たちは玉のような汗をしたたらせながら、30分以上黙々と外野フェンス沿いを走り続けていた。
「お前ら、試合前にいつもあんだけ走るの?」
 試合中、バックネット裏でデータ収集役を務めていた徳島ISの投手が、愛媛MPの投手にそんな質問を投げ掛けている。
「マンダリンイズムですから」
 冗談っぽく、そんな風に返していた。
 取材後の雑談の中で、星野監督にそのエピソードを披露してみる。
「あ、言ってました? 当然です」
 表情を1つも変えることなく、たった一言、そう言った。




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2012/07/10(Tue)

借金2

四国アイランドリーグplus 2012コカ・コーラ杯 後期公式戦
2012.7.8. 徳島インディゴソックス 7‐2 香川オリーブガイナーズ 後期2回戦 <オロナミンC球場> 観衆 430人

香川OG 000 010 001|2
徳島IS 000 001 24×|7

勝 安里 3勝2敗
敗 酒井 3勝3敗

バッテリー
香川OG 酒井、後藤、伴 - 大川
徳島IS 山口、安里 - 山城

本塁打
香川OG 
徳島IS 


 高松・レクザムスタジアムできのう行われた後期1回戦で、徳島インディゴソックスが香川オリーブガイナーズに打ち勝った。7月8日、舞台を鳴門・オロナミンC球場に移し、後期2回戦が行われている。
 徳島IS・山口直紘(21歳、千葉熱血MAKING)、香川OG・酒井大介(25歳、長崎セインツ)の両先発が序盤3回を無失点で凌ぐ。4回表、一死一塁の場面で山口が突如、左上腕部を抑えて苦悶の表情を浮かべる。一塁けん制の際に左肩を脱臼するアクシデントだったが、テーピングを施して続投し、この回も無失点に抑えた。
 5回表、山口に代わって安里基生(23歳、沖縄国際大)がマウンドに登る。香川OGは二死二塁から一番・水口大地(22歳、長崎セインツ)の右前適時打で1点を先制、前半をリードして終えた。
 6回裏、ここまで徳島IS打線を散発2安打に封じ込めていた酒井だったが、二死から二番・東弘明(20歳、八日市南高)に左翼線への二塁打を許す。続く三番・吉村旬平(21歳、光明相模原高)の打球は二塁手のグラブをかすめる右前安打となり、徳島ISが1‐1の同点に追い着いた。
 徳島ISは7回裏にも連続安打でチャンスを拡げる。二死二、三塁から九番・大谷真徳(23歳、立正大)の中前打で2点を挙げ、勝ち越しに成功した。さらに8回裏、この回からマウンドに登った二番手・後藤真人(24歳、アークバリアドリームクラブ)を打ち込むと追加点のチャンスをつかむ。一死満塁のピンチに香川OGベンチは、マエストリに代わる新ストッパー・伴和馬(22歳、名古屋商科大)を送るが、押し出し四球と犠飛を許し、さらに2点を失う。再び二死満塁としたあと、九番・大谷の遊正面へのゴロが高く跳ね上がり中堅への2点適時打に。徳島ISが4点を追加し7‐1と大量リードを築いた。
 香川OGも最終回、七番・大川修也(19歳、地球環境高)の左前適時打で1点を返したが、反撃もここまでとなった。
 徳島ISが7‐2で香川OGを下し連勝、通算成績を2勝1敗とした。単独首位に立つ愛媛マンダリンパイレーツとの差を0.5ゲームとしている。
 香川OGは後期開幕から3戦を終え2敗1分け、首位から2ゲーム差での4位と後期スタートでつまづいている。


『借金2』

 追い着かれての降雨ドロー、終盤に突き離されての負け、そしてビジターで戦った徳島インディゴソックスとの後期2回戦でも、終盤に大量失点を許し敗れた。後期開幕から3戦を終えて、まだ1つも勝ち星がない球団は前期王者・香川オリーブガイナーズのみである。
 前期40試合で香川OGが連敗を許したのはただ一度、最終戦となった6月30日、高知・越智で行われた雨のダブルヘッダー、対高知ファイティングドッグス前期11、12回戦での連敗ただ一度きりだ。だが、後期スタートから3戦目で早くも連敗を喫してしまった。
「1つ歯車が狂ったらこういうことになるということですね、野球は。しっかりアウト獲れるところで獲れなかった。酒井(酒井大介、25歳、長崎セインツ)はよく投げましたけども。バッティングは水物やからね。ま、スイングがちょっと鈍いのは確かやね」
 こちらが投げ掛けた「4安打と打線が揮わなかったが…?」という質問に、香川OG・西田真二監督は「そんな真剣な顔せんでいい!」と苦笑した。「まだ3試合」を強調しながら、あくまで楽観的な表情を見せていたが、完全優勝に向けスタートダッシュの大切さを熟知している監督である。打線の不調を気にしていないというのは決して本音ではない。
 選手たちはダグアウト前でのミーティングのあと、国本和俊(28歳、三重中京大)主将を中心にして左翼ファウルゾーンの芝生の上に座り込み、選手たちだけで再びミーティングを行っている。その様子を三塁側ダグアウトから遠巻きにして、吉田一郎編成部長、智勝コーチ(近藤智勝、元香川OG)の2人が見ていた。
 選手たちに対する明らかな不満がある。智勝コーチが言う。
「打ちに行ってないんです。間の取り方が。徳島の選手の方が打ちに行ったなかで見逃してくる。ウチの選手はピッチャーが投げて『打つかな…?』っていう雰囲気で、(打ちに行く)間合いに入れてない。狙いダマっていうのはそれぞれ個人で見て行けばいい話で。(指示も)ありますよ。もちろん。山口(徳島IS先発・山口直紘)にナメられたかのようにストレートでポン、ポン、ポンと取られたりだとか、その球も簡単に見逃すし。ある程度クリーンナップは数字残せてるんで、各個人に任せてますけど。それ以外の選手というのは結局クリーンナップ、主力の選手におんぶに抱っこの状態で。狙いダマも絞れていないとかいう以前に、何と戦ってるのかよく分からない。ベンチと戦っているのかも分からないし、野球をやってないですよね、自分たちで。ただ指示を待ったり、サイン通りのプレーをしてみたりとかだけで」
 前期優勝の『緩み』が少なからず感じられる。逆に積極性がない。自分自身の課題を意識しつつ、試合のなかであれこれ考えながら工夫してやろう、という意図もまったく見えてこない。勝てない以前に勝とうとする気概がなかった。
 だが、今年のガイナーズはこれが本来の力なのだ、と言う。
「前期はたまたま勝ててましたから。(投手が)打たれても、たまたま打てたり。要は失点が多くても、相手よりゲームセットのときに1点多く獲れただけでいい。今日だって8点獲ってれば1点差で勝ちは勝ちですよ。そういうゲームを前期してたから、後期になってだんだんほかのチームもまとまって来たとこでボロが出るんですよね。最低です、多分。このまま行ったらもう…」
 前期リーグ戦を圧倒的な勝率で制した余裕は、すでに消え失せている。スタートダッシュに成功し、たまたま流れに乗ったから。たまたま相手が自滅してくれたから。それで勝てたのだ。チームとしての実力が秀でていたわけではない。少なくとも智勝コーチはそう考えている。
 ミーティングとストレッチを終えてダグアウトまで戻ってきた国本主将に、選手たちを集めて何を語ったのかについて聞いた。
「今の力はこんなもんや、と。前期優勝したことを忘れてもう1回。チャンピオンシップは出られますから、思いっきりやって。いろいろ自分の課題持って。委縮してやるんじゃなくて、積極的なプレーっていうか、明るくやろうと。そういうのがないと選手に伝染して負のオーラになってしまうんでね。そういうのはチームとして避けないといけないので」
 7年間、ガイナーズの中心選手として結果を残し続けているベテランが、今日のゲームで感じていたことは、智勝コーチと同じ選手たちの積極性のなさだった。
「ベンチから見てても打ちに行く姿勢が見られない。受け手に回ってる。もう1回チームを作り直す。作り直すっていう言い方はアレですけど、一緒にチームを作って行きたいですね。前期、最初の内はちょっといい形で勝ち過ぎたっていうのがあるから、ちょっと負けると…」
 盤石の態勢で前期を制覇したように見えた。だが、すでにクローザーだったマエストリが抜け、戦力自体が変わりつつある。本来のエースである高尾健太(24歳、メディアハウス)も肩がまだ癒えず、現場復帰できないままだ。経験のある主力組を除けば、このチームの選手は非常に若い。特に投手陣は酒井、西村拓也(23歳、福岡レッドワーブラーズ)を除いて1、2年目の選手がほとんどである。
 このまま気持ちが守りに入ってしまえば、波に乗れなければ、決して前期のような戦い方はできない。いずれにしても、前期王者が後期のスタートダッシュにつまづきかけているのは事実である。しかし、国本は「まだ3試合ですからね。たかが40分の3ですから」と、最後まで楽観的な姿勢を崩さなかった。
 10日から16日までの3試合、連戦ではなく日程的には余裕があるが、この3試合で現在の『借金2』を『貯金』に変えることができるかが大きなポイントとなるだろう。ガイナーズが早くも正念場を迎えている。




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