スポーツライター高田博史オフィシャルblog。 四国・九州アイランドリーグを現場取材!※たまにCMも
がっぷり四つ
2007年06月06日(水) 14:59
四国アイランドリーグ公式戦
2007.6.4. 香川OG 1–6 高知FD <サーパススタジアム>

勝 山隈 1勝1敗
敗 松尾 6勝2敗
本塁打 高井1号2ラン(6回松尾)

ゲーム差が「4」ある2チームだが、直接対決はまだ10試合残っている。5連勝で止まった香川OGに対し、5連敗からようやく脱出した高知FDと、やや現在の勢いには差がある。ここまでの対戦成績は2勝2敗1分けと互角だ。前日に予定されていた高知でのダブルヘッダーは雨で流れた。舞台を香川・サーパススタジアムに移し、月曜のナイトゲームで試合は行われた。
香川OG先発・松尾晃雅は序盤から140km/h台のストレートを連発し、高知FD打線に安打を許さない。高知FD先発のパチェコも2回裏にMAX147km/hをマークし、投手戦の展開を思わせた。
3回表、試合が動く。先頭の九番・國信貴裕が四球で出塁すると、一番・日高大輔が手堅くバントで送る。松尾は三番・マサキに今日早くも4つ目となる四球を与え、高知FDが二死一、三塁のチャンスをつかんだ。ここで四番・中村竜央は中前に弾き返し先取点を奪う。
しかしその裏、先頭の九番・三輪正義が四球を選ぶ。一番・国本和俊への初球に二盗を成功させると、こちらも手堅くバントで送り一死三塁のチャンスをつかんだ。二番・井吉信也は右犠飛を放ち三塁から三輪が生還。香川OGがすぐさま同点に追い着いた。
4回裏のマウンドに登ったパチェコだったが、右ヒジに張りを訴えるアクシデントで降板してしまう。急遽、山隈茂喜が二番手としてマウンドに登った。山隈は安打を許しながらも捕手・宮本裕司の二盗刺殺に助けられ、二塁を踏ませない投球を見せる。
前半を1対1で折り返した両チームだったが、6回表、六番・高井啓行のバットが火を噴く。外角高目のストレートを左翼に運び、今季1号となる2ランを叩き込んだ。
8回表、香川OGは122球を投げた松尾に代え、左腕・下地栄輝をマウンドに送る。しかし下地は制球に苦しみ、二つの四球と安打で無死満塁のピンチに陥る。高井の一ゴロ、七番・宮本の左翼線適時二塁打、國信の適時左前安打で高知FDが3点を追加した。
7回までの4イニングを無失点で切り抜けた山隈に代わり、三番手・上里田光正がマウンドに登る。上里田は8、9回をパーフェクトに抑え、高知FDが6対1で香川OGを降した。この勝利で高知FDと首位・香川OGとのゲーム差は「3」に縮まった。


『がっぷり四つ』

4回表のマウンドに立ったパチェコ(高知FD)の様子がおかしい。
キャッチャーの宮本裕司がマウンドまで歩き、声を掛ける。ベンチからは藤城監督も出て来た。右ヒジに張りが出たことを訴えていた。松尾晃雅(香川OG)と投げ合い、互角の勝負を見せていたパチェコを突然失ってしまった。

三塁側ベンチから飛び出してきたのは山隈茂喜である。
「試合前に「いつでも行けるように」と言われてたんで、準備はできてました。気負いも焦りも無かった。(宮本から)「とりあえず全力で一つ獲ろう」と言われました」

「シゲ(山隈)には低目のコントロールをしっかり。「ガマンして低めに投げろよ!」って言ってました」
宮本の言葉に頷いた山隈が、緊急登板のため多めに許された投球練習を行う。
5月から高知FDに合流した山隈にとって、香川OGの打者に対峙するのはこれがまだ2試合目である。しかも前回、6月1日の登板は負け試合の9回1イニングのみ。プレッシャーの量も違う。自分の背番号が入ったユニフォームさえまだ間に合っていない。内角へのストレートを思い切って投げ込み、つまらせていこうと考えていた。山隈にとっては一回一回の登板が大きな意味を持つ。「常にラストチャンスだ」という張り詰めた緊張感の中でマウンドに登っている。

4回裏、右前安打で出塁した五番・丈武が続く六番・近藤洋輔への3球目に二盗を狙った。しかし宮本がそれを許さない。5回裏にも右前安打で出塁した九番・三輪正義が二盗を試みたが、これも宮本に止められチャンスにつなげることができない。

勝負の分かれ目になったのは7回裏だった。
6回に松尾が2点を失い、差を詰めたい香川OGは積極的な攻撃に出てきた。先頭の丈武が四球で出塁すると、近藤への4球目に再び盗塁を試みた。カウント2-1になっていた近藤の空振りと、宮本の二塁への鋭い送球で、無死一塁が一瞬にして二死走者無しに変わってしまった。左翼線に落ちたテキサスヒットに町田雄飛が俊足を飛ばし二塁を陥れる。八番・若林春樹は初球を詰まらせ、フラフラと上がった浅いフライがレフトとショートの間に飛んだ。後ろへダッシュし、振り向いたショート・國信貴裕がバックハンドでこの打球をつかむ。山隈は4イニングを無失点に抑え切った。

3つの盗塁を阻止してみせた宮本の肩と、追撃の場面を封じた堅い守備が香川OGの前に大きな障壁となり、立ちはだかっていた。
「でも、最初に1コやったんで・・・(初回、智勝が二盗成功)」
試合後、そう言って宮本が謙遜してみせた。山隈の気持ちのこもった投球も活きた。

後半に面白いシーンがあった。
8回裏、この回からマウンドに登った上里田光正が三輪に投じた初球である。右中間へ上がった打球が、定位置よりかなりセンター寄りに守っていた右翼手・梶田宙によってなんでもないライトフライになっている。
「アガリ、あの辺よくやられてたんで。もし定位置にいたら?・・・ギリですね」
梶田の記録に残らないファインプレーだった。

香川OGも同じだ。9回表、三番・マサキの打球が高々と舞い上がった。本来ならば右中間を破る長打となった打球だろう。極端に左に寄っていた外野手の守備シフトによりただのライトフライになってしまった。

点差は開いてしまったが、中盤まではまさにがっぷり四つの展開だった。互いに知り尽くした中で接戦をものにするには、たった一つのミスが致命傷になってしまう。今日のサーパススタジアムには昨年の秋、この2チームが見せた激闘を思い起こさせるような緊張感が漂っていた。

高知FDはもう完全にトンネルを抜けたようだ。バスへと向かう途中の主将・國信に聞いた。
「やりたいことがやれてますね。中途半端なスイングしてたのが、振れるようになってきた。なんかわかんないんですけどね。特別これをしたからって訳じゃないんですけど」
(今日の試合には去年のチャンピオンシップを思い出させる雰囲気がありました)
「ありましたねぇ・・・」
グラウンドには確かに普段の試合とは何か違う、一種独特の雰囲気があった。

「最近あんまり投げてなかったから、投げたかったでしょ?」と聞いたこちらの質問に、笑顔を見せながら「そうですねぇ。投げたかったですね」と答えたのはクローザーの上里田である。
「香川との試合、楽しみは楽しみですよ。いいバッターが多いんで、燃えますから」

お互いを知り尽くした2強の前期優勝を賭けた戦いは、これからますます熾烈なものになる。直接対決の数はあと9つ。


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「言い訳にできない」
2007年06月06日(水) 01:29
四国アイランドリーグ公式戦
2007.6.3. 徳島IS 0–1 愛媛MP <オロナミンC球場>

勝 浦川 4勝3敗
S 小山内 4敗1S
敗 片山 2勝5敗

同率3位で始まったここまでの3連戦を、愛媛MPは3連勝、徳島ISは3連敗と、明暗がくっきり分かれている。ホーム3連戦最後のゲームに徳島ISは意地を見せたい。
徳島IS先発の片山正弘は初回、いきなり一番・グレアム義季サイモンに右中間を破られ、スコアリングポジションに走者を進ませる。二番・福西太志がバントで送ると、四番・荒木康一の打球は三遊間への強いゴロに。これを遊撃手・李鐘熙がファンブルする間に三塁からグレアム義季が生還し、愛媛MPが先制点を奪った。
愛媛MPの先発はエース・浦川大輔。浦川は前半5回を無安打で抑え、徳島IS打線にまったく反撃の隙を与えない。
6回裏、一死から九番・HIROがようやく1本目の安打を中前に運び出塁するが、後続が併殺に倒れ3人で攻撃を終える。浦川はこの回でマウンドを降り、小山内大和が7回からのマウンドに登った。
見事な投球で徳島IS打線を無安打に抑えた小山内は、3イニングを完封。愛媛MPが徳島ISを1対0で降した。徳島IS打線は一度も二塁を踏めないまま浦川、小山内の前に完敗を喫した。4連勝と負け無しで今週の4連戦を終えた愛媛MPは、高知FDとの差を1ゲームに縮め、2位を射程距離圏内に収めている。


『「言い訳にできない」』

徳島IS打線を5回までノーヒットに封じ込み、ほぼ完璧なピッチングを見せていた浦川大輔(愛媛MP)が、6回のマウンドを持ってマウンドを降りた。沖監督は疲労からくる首の痛みを抱え、十分なコンディションではない浦川に無理をさせたくなかったのである。1点のリードを持ってマウンドへ送り出したのは、昨日香川OG戦で4回1/3を投げ、終盤の逆転勝ちへと導く大きな仕事をやってのけた小山内大和だった。

残り3イニングを無失点で切り抜けたい。緊張感を持って7回裏のマウンドに登っている。
「ドキドキしてました。とにかく一人ずつを全力で。初めから飛ばして行こうと思ってました。去年浦川が投げた時にリリーフを失敗して浦川の勝ちを逃したことがあって、それが頭の中に残ってて・・・」

最も強く心にあったのは、昨年犯してしまった失敗に対する後悔の念だったと言う。まだ払拭できていなかった屈辱をここで晴らしたい。それには一人一人の打者に対して慎重に、しかし全力を持ってぶつかる。それしかないと考えていた。

アクシデントは最初の打者、二番・岡嵜雄介を打席に迎えた時に起こった。
フルカウントから2球ファールで粘った岡嵜が8球目にバットを合わせる。ボールがマウンドの小山内の右手をライナーで直撃した。方向が変わり、転がった打球を遊撃手・松坂恭平が素早くすくい上げ、一塁手・荒木康一の元に送る。間に合った。
タイムがかかり、野手たちがマウンドに集まる。内野手だけではなく、外野手たちまでもがマウンドに駆け寄ってきた。

「(指の)感覚がなくなってました。でも当たったのが親指だったんです。投げてみて大丈夫そうだったんで。それを言い訳にはできない」

思わぬアクシデントがまだ緊張の残っていた小山内の闘志に火を点けたのは間違いない。「言い訳にできない」のではなく、「言い訳にしたくない」のだ。強い気持ちをさらに奮い立たせた。幸い投球練習で投げた感じは問題がない。ストレートも走った。タイムが解かれた後の最初の打者、三番・永井豪を外角へのストレートで三振に切って取ってみせた。

9回裏、最後の打者・岡嵜をサードゴロに打ち取り、マウンドに集まった野手たちとハイタッチを交わす。7、8、9回をノーヒットに抑え重責を果たした。毎回の4奪三振も奪っている。
ヒーローインタビューに現れたのは4勝目を挙げた浦川と、初セーブを手にした小山内の二人だった。

「浦川の気持ちをそのまま引き継ぎました」
乗り越えられた強さがそこにあった。


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