スポーツライター高田博史オフィシャルblog。 四国・九州アイランドリーグを現場取材!※たまにCMも
戦略と意地
2007年04月23日(月) 16:38
四国アイランドリーグ公式戦
2007.4.21.  香川OG 1–0 高知FD <オリーブスタジアム>

勝 天野 3勝1敗
敗 捻金 2敗

ここまで9試合を消化し、共に5勝3敗1分けと同率首位に並ぶ。勝った方が単独首位に立つ香川OGと高知FDの前期2回戦が、香川OGのホーム・オリーブスタジアムで行われた。
香川OG先発の天野浩一は変化球で要所を抑え、高知FD打線に得点を与えない。高知FDの先発・捻金孝行も古巣相手に序盤3回を無失点で切り抜ける。
4回裏、捻金が制球を乱す。四番・智勝に右前安打で出塁を許した後、3連続四球を与え、押し出しで香川OGが1点を奪った。しかし最小失点に留めた捻金は以降の失点を許さず、8回裏、二番手・岸健太郎にマウンドを譲る。岸もこの回を無失点で抑え、最後の攻撃へと望みをつないだ。
9回表、1点のリードを守りながら最終回のマウンドに立った天野だったが、六番・古卿大知を四球で歩かせた後、七番・宮本裕司に左中間を破られ二死二、三塁と一打逆転サヨナラのピンチに陥る。高知FD・藤城監督はここで今日スタメン落ちしていたYAMASHINを代打に送る。しかしYAMASHINは5球目を打ち上げると三飛に倒れ、逆転はならなかった。天野は145球を投げ抜いての見事な完封勝利で3勝目を挙げると同時に、香川OGが単独首位に立った。


『戦術と意地』

「あのシフト?あれは柳田コーチの案でね」
試合を終えた香川OG・西田監督が答えた。

高知FDのスターティングメンバーの内、スイッチヒッターである一番・國信貴裕を含めれば、三番・日高大輔、五番・マサキ、七番・宮本裕司、八番・高井啓行の計5人が左打者である。香川OGの外野陣は左打者に対して極端な守備シフトを敷いた。左翼手・井吉信也が定位置よりもかなり左翼線寄りに。中堅手・町田雄飛が左中間に。右翼手・近藤洋輔が右中間部分まで守備位置を動かしていた。つまり右翼手の定位置辺りから右翼線にかけてのフェアグラウンドに大きなスペースができる。逆に言えば一塁手の頭を越しての長打にでもなれば、一気に三塁まで狙える可能性が高くなる。

柳田聖人コーチにこのシフトの理由を尋ねた。
「引っ張れないからです。そういうデータが出てるんです。徳島の(コーチ)時代から見ていて、林(マサキ)にしても一番気持ち良く打ってんのは右中間よりこっち(バックネットから見て左側・センター方向)なんですね。もうあそこ(右翼線)へ打たれればしょうがない」
極端な守備体系を採りながら、初回に打たれた日高の右翼線二塁打を除いては危険な打球がほとんど無かった。
「あれは、日高だけ去年見てなくてデータが無かった」

捕手・堂上隼人もマウンドの天野浩一に、徹底して外角を中心としたリードを要求している。野手がシフトを採る上で、左打者に外の球を引っ掛けさせたい思惑があった。
「左打者に対しては、先に真っ直ぐでカウントを取って、厳しいところにフォーク、カーブ、もしくはスライダー」
許した安打はたったの4本である。この作戦は成功したと言っていいだろう。最終回に七番・宮本裕司が放った左中間を破る二塁打も、あのシフトを敷いて無ければ土壇場での同点を許していた可能性もある。
「やっぱり四番のマサキ、4割近く打ってましたからね。彼を一番意識しました。調子が良い時は(野手の)正面に飛ぶんです」
天野の言う通り、3回表、二死満塁のピンチにセカンドライナー。最終回もショートライナーに打ち取り、マサキを完全に封じ込むことに成功している。連続安打記録も止めた。

高知FDの打者は普段と違う焦りも感じていたはずだ。しかし何もできなかった訳ではない。
6回表、四番・中村竜央は一塁にヘッドスライディングして内野安打をもぎ取っている。8回表、先頭の國信は三塁前にセーフティーバントを転がし、やはり頭から突っ込んでいった。「なんとかしたい」という必死さが伝わってくるプレーだった。完封負け目前の場面、声を出しながら思い切り直球を投げ込んでいた天野から冷静に四球を選んだ六番・古卿大知と、追い込まれた後、左中間にはね返した宮本にも意地を垣間見ることができた。

9回表二死満塁、最高の場面で代打として登場したYAMASHINにもし一本が出ていれば、天野の投じた145球はまったく逆の結果になっていたことも十分あり得た。
1対0、最後まで息を呑んだ首位対決だった。


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1点を守る、1点を獲る
2007年04月23日(月) 10:14
四国アイランドリーグ公式戦
2007.4.20. 徳島IS 2–1 高知FD <鳴門総合運動公園野球場>
※ 9回裏逆転サヨナラ

勝 小林 1勝
敗 上里田 2勝1敗1S

ホーム鳴門での三連戦第1ラウンド、徳島ISは勝率5割を賭けて首位を走る高知FD戦に臨んだ。徳島IS・渡邊隆洋、高知FD・上里田光正とエース同士の直接対決となった。
4回裏、試合が動く。先頭の三番・永井豪、四番・小松崎大地が連続安打で出塁すると、五番・福永泰也は手堅くバントで送り、徳島ISが一死二、三塁のチャンスをつかむ。続く六番・西村悟の打球を三塁手・マサキが失策する間に永井が生還し先制点を奪った。
高知FD打線は渡邊の前にあと一本が出ず、7回を無得点のまま終盤を迎える。8回表から渡邊をリリーフした小林憲幸は二死満塁のピンチも凌ぎ、いよいよ最終回を迎える。
9回裏一死、八番代打・日高大輔が遊失策で出塁すると、九番・土佐和広が右前安打でつなぐ。一死一、二塁のチャンスに、今季初の一番に据えられた梶田宙が適時左前安打を放ち、二塁から日高が生還。土壇場で同点に追い着いた。
追い着かれた徳島ISだが9回裏、今日マルチヒットを記録している永井が逆風を突いて右越え三塁打。逆転サヨナラの走者が塁に出る。続く小松崎も四球で歩くと、藤城監督は上里田に代え左腕・大澤亮をマウンドへ送る。しかし続く福永も四球で歩かせ無死満塁としたところで、三人目・西川徹哉にすべてを託した。西川は西村を三振に切って一死満塁とするが、七番・李鐘熙に初球を左前に運ばれると三塁から永井が生還。徳島ISが2対1と劇的な逆転サヨナラ勝利で高知FDを降した。
この勝利によって、徳島ISは3連勝すると共に勝率を5割に戻した。


『1点を守る、1点を獲る』

ようやく土壇場で味方が同点に追い着いてくれた。
9回裏のマウンドに立つ上里田光正(高知FD)の胸にあったのは
「もう「勝ち」はなくなった。味方が取ってくれた1点を守ろう」
という気持ちだったと言う。

実際、高知FDにとっては「ようやく」奪った1点だった。7回に一死満塁、8回にも二死満塁のチャンスを作っておきながら、あと1本が出なかった。延長戦の無い四国リーグではもう勝ちがない。苦労して追い着いた最終回を「抑え切ろう」ではなく「守ろう」と思った。そこに落とし穴があった。

7回を好投した渡邊隆弘の勝利が泡と消え、マウンドを受け継いだ小林憲幸が9回に失点を許した。同点のホームを踏んだ走者は遊撃手・李鐘熙の失策で出した走者である。逆転こそ許さなかったとは言え、ここまで守り続けた1点を守り切ることができなかった。徳島ISにあったのはそんな精神的な落胆よりも「ここを絶対に勝ち切ろう!」とする強い意志だった。

9回裏、先頭打者は三番・永井豪である。
渡邊が7回に迎えた二死満塁のピンチ、そして小林が8回に迎えた二死満塁のピンチを二度に亘って救ったのが中堅手・永井の好守だった。試合前から強風が吹き、一時は試合開催も危ぶまれたほどである。外野手にとって難しいコンディションであったことは間違いない。ここまで2本の安打をレフトに放ち、当たっている。
「絶対に出る。その気持ちだけでした。1球目のフォークがボールになって、(2球目は)インコースの真っ直ぐでした。去年からずっとアガリさんにやられてたので、しっかり踏み込んで打ちました」
内角に来たストレートを捉えた。
「手応えは完璧でした」
打球がライト方向へ高く舞い上がる。終始吹き続けていた強い風は打者にとって完全に逆風である。だがそれをものともしない。右翼手・梶田宙が計った以上に打球は伸び、猛然と後方にダッシュするが追い着かない。
「逆風だったんで・・・。あんなに伸びると思わなかった」
三塁ベースに悠然と立った永井に一塁側スタンドから大きな歓声が上がる。

失点を許したのは言い訳のできない自分のミスからだった。9回表、代打・日高大輔に対し、三遊間を締めていた遊撃手・李鐘熙は、予想と逆に二塁ベース寄りに飛んできた打球の処理を誤った。そして同点に追い着かれた。

9回裏、無死満塁。打席に入っている六番・西村悟が決めればもう自分に打順は回って来ない。
「とにかく自分の中でずっと「回ってこい!」と思ってました。西村が打席に入ってる間も準備はずっとしてましたね」
この回、三人目としてマウンドに登った西川徹哉の変化球に西村が倒れた。待ち望んでいた打席は一死満塁、一打サヨナラという願っても無い場面で巡って来た。強い気持ちを持って右打席に足を踏み入れる。
「ファーストストライク。甘くきたら行こうと思ってました」
初球のスライダーを引っ張った。打球が二塁走者の行く手を阻むようにしてレフトへ転がっていく。一塁を回ったところで自軍ベンチを振り返り、大きく両手を挙げた。あっと言う間にチームメイトに揉みくちゃにされた。

「勝って勝率を5割に!」
徳島ISはこの言葉を合言葉のようにして試合に臨んでいた。1点を守り切ろうとした上里田と、最後に勝ち切ろうとした徳島ISの野手陣。そこに「守る」と「攻める」という気持ちの違いが見える。そしてもう一つ、なんとかしてミスを取り替えそうとした李の執念がそこにあった。


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