試合前、左から右に強くはためくスコアボードの旗を見て、番場由樹(徳島IS)は思った。
「今日はカーブを少なめにしないと危険だ」
追い風で流されてしまい、ブレーキの効いたカーブが打ち頃のスライダーになってしまうことを危惧したのだ。調子は良いとも思わなかったが、然程悪くもなかった。
岸健太郎(高知FD)は初回に2点をもらい、うまく流れに乗っていた。
「2点あれば十分だと思っていたので、初回に獲ってくれて精神的にかなり楽でした。珍しいんですけどね。僕の時、結構(打線が)沈黙するんで。涼しかったから楽でしたね。やっぱり僕らはいつも暑い中やってるんで」
6回、大二郎に右中間を破られるまで無安打投球を続けている。
昨日まで4連戦を戦った土佐山田スタジアムは人工芝である。グラウンドの暑さは土のそれに比べると遥かに暑い。加えて今日はナイトゲームである。鳴門のマウンドに吹く風が心地良く感じられた。
強い風は徳島IS守備陣も翻弄した。
3回表、この回先頭の一番・YAMASHINの打球は、左中間へ上がった浅いフライとなった。風で流された飛球を左翼手と中堅手、そして遊撃手が追い、交錯して落球した。先頭打者が出塁すれば、すぐに走者を二塁に進めるのが今の高知FDの野球である。YAMASHINが二盗に成功し、無死二塁のチャンスを迎えた。
一本が出れば高知FDへの大きな追い風となる場面、番場は踏ん張った。二番・日高大輔をチェンジアップで三振。三番・宮本裕司を二塁ゴロ。そして四番・山本健士もチェンジアップで追い込み、最後は外角低目への渾身のストレートで空振りに仕留めた。マウンドを駆け下りながら小さなガッツポーズを見せた。
「オレのせいだ、と思って。意地でした」
初回の2点を悔い、しかしそれが逆に闘志に火を点けていた。
風に乗った岸と、風を止め続けた番場。
二人の投手戦は7回まで続いた。
(ヨンスポWEB、2006年7月31日掲載)

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